移住者に必要なのは「自分を知ってもらうこと」

「都会で孤立する不安からの“逃げ”たんです」女フリーランス・バツイチ・子なし。42歳からのシングル移住(東京→鹿児島)で手にした幸せ_5

――温泉は満足ですか?

もう最高です。お湯はもちろんですが、毎日浴場に通っていると、自然と顔見知りができるんです。湯舟に浸かりながら、あれこれと世間話をする時間が楽しくて。まさに裸のつきあい。そのうちに野菜やお手製の佃煮をもらったりするようにもなりました。そんな霧島での暮らしはとにかく時間がゆったりと流れ、とても豊かだなと実感しています。

――お金や利便性には代えられないものが霧島にはある?

温泉だけじゃなく、食べること、眠ること、すべてがストレスフリーで、東京での暮らしより、生活を大事にできている感じですね。たとえば、コンビニまで車で行かなければならない霧島での暮らしは一見、不自由に見えます。都会のように出来合いのものを高い値段で買って食べることも減りました。

畑で摘んだばかりのルッコラに近所の牧場で買った生ハムを乗せ、そこにフレッシュなオリーブオイルをかけて食べるなんていう贅沢もできる。こんな食生活、都会では難しいですよね。

そんな体験をするうちに、今ではお金で利便性を買っていた都会での暮らしが不思議に見えるようになりました。流行に合わせて毎シーズン、服を買い替えるようなこともなくなりました。

――移住のコツがあれば、伝授してください。

コツというより、心がけになりますが、まず自分を知ってもらうことです。会う人、会う人に笑顔で接することを大切にしています。なにしろ、こちらは地域が育んできたコミュニティにお邪魔をする立場なのですから、笑顔で謙虚に地域に馴染むという努力は欠かせません。

あとは郷に入らば、郷に従えです。自治会や寄り合いにできるだけ顔を出し、自分の仕事だけでなく地域の活動にも汗を流す。それも今だけのことでなく、20年後、30年後を見据えて動くことが大事だと思います。
地方はどこも人口減少が続いています。20年後、30年後でも移住先のコミュニティが存続できるよう、一定の役割を果たすという覚悟をする。その覚悟を移住先の人に感じてもらうことができれば、地域の一員として迎え入れてもらえるのではないでしょうか。

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撮影/村上庄吾

女フリーランス・バツイチ・子なし42歳からのシングル移住
藤原 綾
「都会で孤立する不安からの“逃げ”たんです」女フリーランス・バツイチ・子なし。42歳からのシングル移住(東京→鹿児島)で手にした幸せ_7
2023年2月3日発売
1,650円(税込)
四六判/256ページ
ISBN:978-4-08-788087-8
バツイチ、子なし、ひとり暮らしの中年女性が人生後半戦を見つめ直し、生まれ育ち40数年暮らした東京を離れ鹿児島県霧島へ。戸建て物件探し、引越し、リフォーム、ご近所付き合い、畑仕事、仕事先の東京との往復……オンタイムで綴る移住ルポ。

以下、目次一部。
親も旦那も子どももいない、自由すぎる私の移住先/世田谷ではなく鹿児島で、サザエさんの家探し/仕事、生活費、災害対策……移住の前に考えなければならないこと/男はいなくても家がある。43歳のバースデー/働けど働けど、女フリーランスの不安は増すばかり/温泉、食べ物、住まい……都会人が知らない贅沢/移住の前に、本当はやっておかなければならなかったこと/山の中腹でぽつり。40女の孤独との向き合い方……etc.
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