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『七つの大罪』も手掛けたヒット編集者が殺人罪に問われ世間も注目

2016年8月9日未明、東京都文京区の自宅から朴被告は119番通報していた。

「妻が倒れている」

2階建ての戸建てに救急隊員らが駆けつけると、階段の下付近に妻の佳菜子さん(当時38)が倒れていた。すでに心肺停止状態で搬送先の病院で死亡が確認された。

朴被告は当初、救急隊員らに「妻は階段から落ちた」と説明するも、翌日になって一転、「階段の手すりで首をつって自殺した」と供述。実際に頸部圧迫による窒息死が佳菜子さんの死因とみられている。警視庁は一貫性のない言動を不審に思い、捜査を進めた。

朴鐘顕被告
朴鐘顕被告
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「このとき佳菜子さんは4人目を出産して間もなくで、『産後うつ』だったとみられています。死の直前には『夫が子育てを手伝ってくれない』などと家庭支援センターに相談に行っていたほか、さらに朴被告によるDVを訴えていたこともありました。

そのような事情を踏まえたうえで、警視庁が慎重に捜査を進めたところ、1階の寝室に佳菜子さんの尿反応があることや血液が混ざった唾液が検出されるなどしたため、朴被告が首を絞めて殺害した疑いが強まった。

そして事件から約4ヶ月後の2017年1月に殺人容疑で逮捕しました。その他の状況証拠から、警視庁は朴被告が1階で佳菜子さんの首を絞め、証拠隠滅のために2階から突き落としたというストーリーを検察とともに描きました」(前出の記者)

大阪府出身で在日韓国人2世だった朴被告は父を早くに亡くし、貧しい生活と時には差別に苦しみながらも京都大学法学部に入学。卒業後は講談社に入社し、敏腕編集者として活躍していた。担当作品のなかでも有名なのは「週刊少年マガジン」で担当した『GTO』『七つの大罪』など。逮捕時は青年漫画誌「モーニング」の編集次長で、当時人気絶頂だった『進撃の巨人』に関わったこともあった。

講談社(撮影/集英社オンライン)
講談社(撮影/集英社オンライン)

逮捕報道が流れると、朴被告が大ヒット漫画を担当していた敏腕編集者だったことに世間は大きく反応した。朴被告は当初「妻は階段から落ちた」とウソをついたことについて「子どもに妻が自殺したと知られたくなかった」と説明し、その後は「妻は自殺した」と、一貫して無罪を主張した。