「中年男性と握手したらベタベタしたものを手に塗りこまれ…」草加市最年少議員、平山杏香市議が選挙戦を振り返る。元野球部マネージャーが政治家を目指したワケ
4月15日和歌山県で起きた岸田首相襲撃事件をきっかけに、被選挙権や供託金などの現行の選挙制度に対して様々な見解が各メディアで取り沙汰された。若い世代が政治家を目指す上で越えなくてはいけないハードルとは。埼玉県草加市の最年少議員である平山杏香市議(27)に密着して、その実態を探る。
平山市議が政治家を目指したワケ
市議会議員は兼業が認められているため、平山杏香市議は草加市議になった現在も草加市内のハウスクリーニング会社の執行役員を務めている。
平山市議が市議会議員を目指したきっかけは同社でアルバイトをしていた時期だった。
「当初は人手が足りず、私自身も現場の仕事に出ていました。お客さんの自宅に訪問して室内エアコンの分解をして洗浄をする業務で、作業は1時間ほどかかります。
手が空いたタイミングでお客さんと世間話をしていると、『道路脇に生えた草木のせいで車が見えづらい』とか『あそこの道は電灯が少なく暗いから怖い』など、多くの人が小さな困りや悩みを抱えていることに気づきました」

インタビューに応じる平山市議
しかし、市役所にわざわざ言うほどのことでもないと本人たちも半ば諦めている。そんな話を聞いているうちに、次第に平山市議はそれらを解決することこそが市議の仕事なのではと感じるようになる。
「28人いる草加市議にひとりくらい、市民の小さな声を拾いあげる市議がいてもいいんじゃないか。そう思い始めたんです」
ごく普通の家庭で育った平山市議は地盤もなければ看板もない。母親に市議になりたいと告げると「何言ってんの?」と冗談だと思われる始末。それでも平山市議は無所属で出馬することを決意した。
「そのときに『ジャージで行く!』と決めたんです。スーツだとお堅いイメージで距離ができてしまう。でもジャージなら気軽に話しかけてもらえるかなと。それに動ける政治家でありたいと思うので」

選挙活動中の平山市議(本人提供)
そして、大きな挑戦が始まる。
「とにかく市議になるための行動を、と自らを鼓舞し、落選したときのことを考えないようにしていました。それでもやはり不安でしたよ。現行の選挙制度で若い人が政治家になろうと思ったら、文字通りすべてを失う覚悟が必要ですから」
25歳以上であれば市区町村議会議員の被選挙権を得られる。しかし、25歳といえば通常は働き盛りの若手社員。市議になるための活動と、通常の仕事を両立させるのは簡単なことではない。
40代男性の握手に応じたら…
「いくら政治に興味があっても、大卒入社でようやく仕事に慣れてきたところで、仕事を失うリスクを考えるとなかなか踏み出せないと思います。
私の場合は今のハウスクリーニングの会社が融通をきかせてくれましたし、『落選してもまた働いて頑張ってくれればいい』と言ってくれたので、その点は恵まれていました。
ただ、(政令指定都市以外の)市議選では30万円の供託金が必要で、法定得票数を獲得できないと没収されてしまいます。
その他にもチラシ代など、準備の活動と結局200万円以上にもなってしまいました」
こうした費用に加えて、無所属から出馬するなら半年はその準備期間にあてたいところ。こういった理由もあって、日本に若い政治家が増えない点は否めないだろう。
また、駅での選挙活動中にはこんな出来事も。
「40代くらいの男性に握手を求められたのですが、その方の手はハンドクリームがベタベタに塗られていて、握手をすると私の手に塗りこんできたのです。私は『ありがとうございます。でも、ここは手を洗う場所もないので……』とやんわりやめてほしいとお伝えしました。
その方は私がまわった4つの駅に必ず来ていましたね。さすがにハンドクリームまみれはそれ以降ありませんでした」
苦渋にも耐え、ジャージ姿で駅前に立ち続けていくうちに、平山市議の知名度は徐々に上がっていき、投票日直前には「頑張って」と市民から声をかけられるようになった。

選挙活動をするなかで徐々に知名度を上げていった
「投票前の1週間は不安というより、『もうやるしかない!』という気持ち。
投票日当日は選挙活動はできないので市外の飲食店で“お疲れ会”をやっていましたが、どうにもそわそわしてネットで開票数ばかり気にしていました。そして、当確が出たときはほっと胸をなでおろしました」
候補者は41人。当選議員28人のうち平川市議は4番目の得票数を獲得し、見事、草加市議員に選出されたのだ。
電話番号公表のため直接誹謗中傷も
得票数はトップ当選した候補と約700票差の3534票。このことからも市民の期待が大きいことがわかる。そして、当初の目的どおり平川市議は市民の小さな困りごとにきちんと目を向けている。
「市民の方とのお話のなかで『ここのカーブミラーが曲がってるよ』という報告があったので、すぐに確認して調整しました。来年度には取り換える予定です。事故が起こってしまう前でよかった。
それに解決するのは市民の小さな困りごとだけではいけません。草加市が抱える課題のひとつに財政問題が挙げられます。移り住みたくなるような草加市を目指すとともに、まだ選挙権も持たない草加市の子供たちが自分たちの街を魅力的だと感じてくれて、そして政治に興味を持ってもらえるような街づくりをしていきたいです」

しかし、議員としての苦労は別のところにもある。
「議員は公人なので、草加市では基本的に住所も携帯の番号も公表しています。
その影響で、先日、自宅にある議員さんがいきなり挨拶に来られて。事前の連絡がなかったので、私はすっぴんで応対してしまいました。
電話にも草加市民と思えない方達から『2人でご飯行きませんか』なんてお誘いがしょっちゅうかかってきます。もちろん断りますが。『2人きりでお会いできないので、駅などに会いに来てください』と言って。
それと政策とは関係ない、ビジュアルに関する誹謗中傷の電話がくることもありますね」
しかし、大きな志で議員となった平山市議は落ち込む暇さえない。最後に、今後の議員活動について聞いてみる。
「私自身は2期目を目指すのか、政治家以外の別の目標に向けてがんばるのか、現時点ではまったくわかりません。でも何をするにしたって中身がないとダメ。いろんなことを並行して考えていかなきゃと思っています」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/村上庄吾
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