目下、福岡だけでなく東京でもその専門店が増加中の通称「鉄板焼肉」。
東京ではすでに7店舗前後のお店がこの料理を提供しており、たびたびTVに取り上げられ、放送翌日には大行列ができるという。
専門店だけでなく居酒屋の目玉料理品として扱うお店も出てきており、大手外食チェーン店も参入しはじめた。さらに、食品メーカー・エスビーより家庭でも楽しめる「町中華 びっくり亭本家の焼肉の素」が絶賛発売中だ。まさにブレイク寸前の様相である。
この料理、一言でいうと、鉄板皿にのった豚ハラミのキャベツ炒め。それにライスと味噌汁がついており定食のスタイルとなっている。
<橋本環奈も大好物!>明太子、もつ鍋に続く第3の博多グルメ「鉄板焼肉」がやって来た! ごはんが止まらない福岡のソウルフード「びっくり亭の焼肉」が首都圏に急増中!
福岡のソウルフードとして名高い「鉄板焼肉」をご存じだろうか? 福岡県出身のタレント、博多華丸・大吉や橋本環奈が地元の愛着料理として絶賛しており、このままいくと、近い将来、明太子、もつ鍋に続き、第3の博多グルメとして全国的な地位を築くかもしれないのだ!
正体は豚ハラミのキャベツ炒め

味は、ニンニクの利いた塩味で、このワイルドな味付けにたくさんのラードをまとわすことで、まろやかで深い旨味が加勢し、ごはんがすすむ。キャベツは強火の調理で塩梅よく歯ごたえが残り、鉄板皿を傾け油を溜め、そこに特製辛味噌を溶かし味変させると、さらにごはんをかき込みたくなる。
※豚ハラミは、全国的に小売店ではほとんど流通していない希少部位
東京では博多のソウルフード「鉄板焼肉」として話題だが、正式名称は「びっくり亭の焼肉」だ。この料理のオリジナルは、南福岡「びっくり亭本家」にある。昭和38年に誕生し、地元では“ご当地料理”ならぬ、“ご当店料理”として広く認知されている。

南福岡にある「びっくり亭本家」
『ケンミンSHOW』で一気に全国区!
なぜ、その専門店が福岡から離れた東京で増えているのか?
「びっくり亭本家」の三代目店主・的場孝史郎さんは「老若男女に愛される味で、また食べたくなるような味、場所を選ばず万人受けする味だからでしょう」と分析する。
フードジャーナリストのはんつ遠藤氏も「誰もが好きな焼肉の定食だし、特製の辛味噌で、長らく続くブームの一つである“辛味”を押さえている。牛の焼肉定食だとリーズナブルでも2000円くらいにはなるが、それが豚ハラミとはいえ、家賃の高い東京でも福岡と同じ1000円前後で頑張っているからでは……」

鉄板にのせた特製辛味噌
さらに「TV番組『秘密のケンミンSHOW 極』で取り上げられた影響でしょうね。こういう料理があるんだっていうのが、全国に宣伝されたわけです。実際に美味しいので、オマージュ・リスペクト店が福岡だけでなく、東京でも増えています。全国においしいということが伝わったので、やりたいという方が多い」と、はんつ遠藤氏は語る。
「びっくり亭の焼肉」のリスペクト系で、東京で今年開店したとある店主に話を聞くと『ケンミンSHOW』の影響があるとしながらも「地元が福岡で小さいころから慣れ親しんだ味でした。大人になり自分が店を開くなら、是非やりたいと思っていましたし、居酒屋をやるにあたり、パンチのあるメニューが欲しかったんです」と、「鉄板焼肉」参入の理由を説明する。
実はこの料理の作り方が、YouTubeにアップされている。複数あるが、中にはなんと世界中から1600万回もの再生回数を誇るものまで。大鍋に、ラード→肉→塩→ペーストニンニク→キャベツ→塩(再調整)の順で炒められていく。この動画を参考に「びっくり亭の焼肉」を研究し、東京に合うようにローカライズする料理人もいることだろう。

シンプルゆえに難しい調理!
前出のインスパイア店の料理人に聞くと、「鉄板焼肉のキモである辛味噌をどんな味にするのか悩みました。試行錯誤をくり返し、結局、本場に寄せる方針を取りました。あと、ラードにも気を配りました。缶のラードはうまみが少ないので、背油からラードを取っています。この方法はコストを下げることにも役立っています」という。
この点を本家の的野さんに聞くと「ラードは市販のものに、秘密の油を混ぜることで、まろやかにしている」「辛味噌は、深みを出すためにかなりの手数を加えている」とヒントを教えてくれた。
「びっくり亭本家」の味は、昭和38年から60年間、福岡で他店舗に味をマネされ続けてきた。時には同じ看板を勝手に掲げる無法なお店もあったほどだ。しかしながら「なんとなくマネはできても、美味しくなければつぶれる店もある」とこの料理の難しさを的野さんは語る。

人気店ゆえに大量の食材を仕込む
「この料理を作れても、うまさを出すのは別次元。簡単にできるものではないんです。キャベツや肉の状況で味が変わってもくる。それに対応するためには1年ぐらいでは無理。素材をどれだけ生かせるかが重要。私も20年間、試行錯誤を繰り返しています。
例えば、春キャベツは、甘みが強く、水分が多く、ベチャベチャになりやすい。ところが、冬キャベツは、芯が固く、苦みが強く、甘くない。だから、毎回試作をし、その日の調味料の配合を決める。セントラルキッチンではできない理由です」(前出の的野さん)

はんつ遠藤氏に東京での今後の広がりについて聞くと「『びっくり亭の焼肉』は、タピオカのような急増ではなく、地道に増えて定着していくのではないでしょうか。新鮮なキャベツに豚肉という軸は変えずに、辛味噌を工夫したり、トッピングをつけたりして……」と予測。
東京にある、博多のソウルフード「鉄板焼肉」は本家に比べ、まだまだ磨きがかかっていないかもしれないが、その発展の余地に期待し、近い将来、明太子、もつ鍋に続き、第3の博多グルメとして全国的な地位を築くのを、ぜひ見守りたい。
本場では、夕方仕事帰りに、鉄板焼肉を頼み、ビールやハイボール2杯をスカッと飲み切り、立ち去るお客さんが多いとか、そんな光景を東京でも目にする日はそう遠くないだろう。
取材・文/集英社オンライン
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