話題のミステリーアニメ『オッドタクシー』の物語はいかにして生まれたのか?ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記が、脚本家・此元和津也に迫る!(後編)_1

『オッドタクシー』がウケるという自信はなかった
※この記事には『オッドタクシー』『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』に関するネタバレを含みます! 未視聴の方はご注意ください!

吉田 此元さんの脚本の才能が『オッドタクシー』で証明されたと思うのですが、自信はあったんですか?

此元 いや、全然ないですね。たまたまです。作品を成立させるのに一生懸命で、自分でもちゃんと着地できるのか……よくわからないままでした。

吉田 でも、平賀さんは此元さんの才能を見抜いていたわけですよね。

平賀 そうなんです、と言いたいところですが、『セトウツミ』も、終盤に仕掛けがあるじゃないですか。オファーしたときは(終盤にさしかかる前の時期だったので)それを知らなかったんです。会話劇の面白さ、センスに惹かれてオファーしたので。

吉田 えっ、そうなんですね!

此元 当時は誰も『セトウツミ』の後半の展開を知らなかったはずなので、びっくりするだろうなとは思っていました。

吉田 そう考えると、『オッドタクシー』でも『セトウツミ』でも見事に伏線を回収する物語になったわけですね。連続してこういう作品に携わったことに、運命を感じるところはありますか?

此元 確かに、これまで自分の創作活動の中で、能動的に動いたのはデビュー前の投稿作だけなんです。あとは全部、受け身でやってきましたけど、それがうまくいっているのは運命的と言えるかもしれません。

吉田 僕は天才がサラッと作ったようにも思えたのですが、苦労はされましたか?

此元 苦労……最初は単純にやる気が出なかったですね。どこで放送されるかもわからないし、友達から近況を聞かれて「アニメの脚本をやってる」って答えていましたけど、そこから3年くらい何も動かず、嘘つきだと思われていましたから(笑)。漫画は描いたら載るし、読者からのリアクションもある。脚本は書いたからといってすぐに表に出るわけでもないので。

吉田 具体的な締め切りはなかったんですか?

此元 最初は緩かったんです。だからやる気が出ない(笑)。締め切りは守るタイプなんですけど、作業期間が長く設けられていても、作業に取り掛かるのは締め切りの2、3日前なので。

TVシリーズ最終話、クライマックスシーンより
TVシリーズ最終話、クライマックスシーンより

3億円事件を想起させた『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』の魅せ方

――ちなみに吉田さんは、『イン・ザ・ウッズ』にはどういう感想を持ちましたか?

吉田 『イン・ザ・ウッズ』を見て、「(1968年に起こった)3億円事件のドキュメントみたいだな」と思ったんですよ。3億円事件は、いろんな角度から検証番組が制作されたじゃないですか。『イン・ザ・ウッズ』は、「練馬女子高生失踪事件」という世間を騒がせた事件に対し、証言を集めて真相に迫るドキュメンタリー作品みたいだなと。この証言形式というモチーフはすぐに浮かんだんですか?

此元 条件的にあれしかないなという感じでした。何か余裕を持って作ることができたら、そのときは別のものが出せたと思います。

吉田 余裕がなかったからこその「最適解」だと思います。そもそもTVシリーズの作り方として、キャラと物語、どちらが先にあったんですか?

此元 基本的には木下監督が描いたキャラが最初にズラッとあって、それを自由に使ってくれという感じでした。僕の方で新しく作ってほしいとオーダーしたのはヤノと関口ですね。ドブの反対側にいる悪いやつが欲しくて。

吉田 現状よりも悪役が少なかったわけですね。

此元 正確に言えばヤノはいたんです。ただキャラとしてはコウモリで、ラストのオチから考えるとキツイじゃないですか。そういう意味でビジュアルをもう一度描き直してもらいました。

吉田 それでヤマアラシになったんですね。

中央がヤノ。ラップで韻を踏みながら会話する悪いヤツ
中央がヤノ。ラップで韻を踏みながら会話する悪いヤツ