【M-1ファイナリスト】ロングコートダディと賞レースの今後。「キングオブコントは勝ちづらくなっちゃう気はします……」
関西若手のエース格、ロングコートダディ。M―1、キングオブコントの両賞レースでファイナリストの常連となりつつあるが、いまだ戴冠には至っていない。ただし、これら賞レースでは「常連組が不利」との見立てもある。彼らは賞レースについてどう考えているのか?
ロングコートダディ インタビュー♯3
「キングオブコント7位」に思うこと

ツッコミ、ネタ作り担当の堂前透(左・32歳)とボケ担当の兎(右・34歳)
——今年のキングオブコントを7位で終えたときの率直な感想をお聞かせください。
兎 7位ぐらいなんだろうな……という感じですよね。
堂前 直後は、正直、「また来年もか……」ってなりました。でも今は、そこまで重くとらえてはいないです。切り替えました。いい意味で、どうでもよくなりましたね。
——そこは、考え過ぎてもしょうがないというか。
堂前 「今年は勝てる!」なんて思う年も来ないんでしょうけど、もし、そういう年が来たとしても、勝てるかどうかは、その日の運にも左右されるでしょうし。だったら、自分たちの好きなようにやって、いつか獲れたらいいやぐらいの感じでいいのかなって。キングオブコントに関しては。
――ニッポンの社長の辻さんは「勝てる大会ではなくなってしまったのかも」という意味のことを何度も言っていましたが。
兎 う~ん。かもしれないですね。
――どのあたりが、そう思わせるのですか。
兎 さっきもちょっと話しましたけど、キングオブコントは拍手で返すようになっちゃったので。おもしろいときは拍手をしてくださいと。
――2020年に初出場していますが、そのときは明らかに雰囲気が違うわけですか。
兎 ぜんぜん違いましたね。去年ぐらいから、拍手の量が急激に増えたんですよ。
――2021年はM-1決勝にも勝ち進んでいますが、M-1と比べてもその傾向が強いのですか。
兎 M-1は笑いで返してくれる感じがありますね。笑い声でしっかり反応してくれる。キングオブコントは、暖かい雰囲気はあるんですよ。誰にでも拍手してくれるので。コンビのスタイルにもよるんじゃないかな。やりやすいというコンビもいるとは思います。
勝つために大会に“付いていく”かどうか
——「声は出さずに拍手で」というのは、新型コロナの影響ですよね。だったら感染状況が収まって、いつも通りの人数の客を入れて、マスクなしでの観覧もOKになれば、また戻るんじゃないですか。
兎 でも前回、今回と、それで番組自体が盛り上がったというのもあったと思うんです。となると、番組サイドはそれを続けるじゃないですか。当然ですよね。
ただ、僕らのスタイルだと勝ちづらくなっちゃう気はしますね。だから、そこは僕らなりに合わせにいくかどうかでしょうね。拍手をもらいに、ボケ数を増やすとか。

自分たちの場合「大会に合わせてスタイルを変えるべきではないと思う」と語る堂前
――大会の性格に合わせて、勝つために変化させるということですよね。
堂前 何とか(大会に)付いていこうともしてたんですけど、たぶん、もう付いても行かないんじゃないかな。
兎 そうか。付いていきたいけどな。
堂前 付いていかないほうがいいと思います。僕らに関しては。
兎 そんなことをいろいろ考えてるときがあったんですよ。2年前とかな。付いていった方がいいんじゃないか、とか。でも、付いていったら、好きでもないネタをやることになっちゃうんじゃないか、って。今はそんなこともないんじゃないかな。付いていく付いていかないに関係なく、どんなスタイルのネタでも対応できるんじゃないかな。
――ニッポンの社長の辻さんは、「今回ほどファイナリスト発表の瞬間が辛かったことはない」という話もしていました。三年連続出場がかかっていたこともあって、受かって当たり前というか、落ちたときに失うものがどんどん大きくなっていくからなんですかね。
兎 周りから期待されますし、二ッ社(ニッポンの社長)の今大会にかける思いもめっちゃ強かったと思います。準決では、めっちゃウケてましたしね。
出れば出るほど心身は削られていく
――ロングコートダディも今度、決勝に出るときは三度目となります。出場回数を重ねれば重ねるほど、いろいろな意味で、心身の負担は増えていきそうですよね。
兎 出れば出るほど心身は削られていくでしょうね。まず、前回の自分らを超えていかなきゃダメなんでね。前の方がおもろかったとか言われたら、きついじゃないですか。

M-1 、キングオブコントともに近年、ファナリストの常連となっているロングコートダディ。ただし、出場を重ねることによるつらさもあると語る兎
——調べてみたら、M-1よりもキングオブコントのほうが初出場組の優勝率が高いんですね。複数回出場している組が勝ったのは14回中6回しかないんです。
兎 え~。あと全部初出場ですか?
——はい。M-1は2021年の段階では、初出場組と複数回出場組の優勝割合は8回と8回で、ちょうど半々なんです。
兎 形がまったくバレていないというのは、やっぱり強いんですね。
——キングオブコントは、3回以上の出場で優勝している組は2組しかいませんでした。3回が空気階段、4回がジャルジャルです。
兎 うわ、ジャルジャルさんは、4回も出てるんや。
――2021年にM-1決勝に初出場したあとは、漫才とコントの仕事比率が8対2ぐらいになっているという話でしたが、今はどれくらいなのですか。
兎 6対4ぐらいで漫才ですかね。
堂前 今はM-1の時期やから漫才ばっかりしていますけど、それがなければそれぐらいやな。
――普通のコンビは、ネタをつくっている方がよくしゃべって、ネタを作っていない方は遠慮気味なものなのですが、ロングコートダディの場合は逆ですよね。兎さんの方が、ものすごく自由に話をする印象があります。いいですよね。
兎 そうなんです。
堂前 助かってます。
兎 責任感がないんぶん、逆に、何言ってもいいだろぐらいの感じなんで。

取材・文/中村計 撮影/矢橋恵一
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