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創作は生きていく上での「苦行」

ひとりよがりも迎合しすぎもダメ。劇団ひとりにとって「創作すること」とは?_1
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──先日のラジオ(『劇団サンバカーニバル』)で「仕事が溜まっているから、また隔離期間に入りたい」と話されていて気になりました。

そうなんです。今年の4月に小説のゲラチェック、脚本と漫画原作の締切に追われてて、「これはヤバいな」って思った瞬間にコロナに罹ったんですよ。当時は隔離期間が2週間あって、その間は子どもたちの面倒も看れない。だからずっと部屋に閉じこもっていて、そしたら仕事が全部終わったんですよ。だから、また一週間でもいいから部屋に閉じこもれたらありがたいなと思って。

──今はどんな〆切を?

ドラマの脚本と、作詞と、バラエティの台本と……。

──色々抱えていらっしゃるんですね……。小説『浅草ルンタッタ』や映画『浅草キッド』のインタビューを拝見する中で、ひとりさんがよく「これを作らないと逃げになる」「この作品を作るのは自分が適任だと思った」と話しているのが印象的でした。多忙な中での創作活動には、こういった使命感が必要ということでしょうか?

そうですね。小説も映画も本業ではないので、正直やらなくてもいいことなんです。でも何か気になる対象に出会って、自分の頭の中でいろんな想像が膨らんでいった時に、「これを作品として形にしなくちゃいけない」って使命感みたいなものが生まれてくる。たぶん、生きていく上でやらなくちゃいけないひとつの「苦行」みたいなものなんですよね。正直に言うと。

ひとりよがりも迎合しすぎもダメ。劇団ひとりにとって「創作すること」とは?_2

──苦行ですか。

たぶん冒険家と同じじゃないかと思って。どうしてわざわざ南極大陸を横断しなくちゃいけないんだって話だけど、きっと勝手に使命感を持ってるからですよね。そういうことなのかなと思います。僕にとって物語を作ることは。

──冒険家も、危ないところになんて行かない方が安全だけど、それでも行くわけですもんね。

そう。それと同じで、僕も挑み続けていないと駄目な性格というか。挑戦しなくなったら廃人になっちゃうんじゃないかって怖さもあるくらいで。今の時代の流れとしては、なるべくゆとりを持って、自分を追い込まないで、心の平穏を求めるのがどちらかと言えば主流ですよね。だから僕のしてることはそれとは逆かもしれない。自分をいつも追い詰めていたいから。

でも僕らの仕事は自営業だし、楽しようとしたらいくらでも楽できちゃう。その分仕事が減っていくだけで、誰もムチ打っちゃくれないですよね。だから自分で自分にムチ打つしかない。それでいて、自分で始めたことをきっかけに仕事をオファーしてもらえるようになると、どんどん規模も大きくなっていくんでね。いわば、冒険家がより大きな山を目指してるのと同じかもしれない。自分の中で大変そうな方に行けているうちは成長しているなって感じられますね。