子供の頃のあだ名は「おじいちゃん」

流行は循環する。
ファッションのトレンドは20年周期とはよく聞く話で、SNS時代のフィルムライク、若手俳優のカバーする昭和の名曲も同様。「古い」とされているものにはいつだって一番新しくなる可能性が秘められているのだ。

かくいう自分も令和の時代に落語家というトラディショナルな肩書きでもって生きているため、よく「なぜ?」「どうして?」と投げかけられる。
しかし自分の中では落語が伝統的だとか古典的だと感じた瞬間は一度もないのだ。

物心ついた時から椅子の上に正座するのが一番楽な姿勢で、好きな食べ物はお新香、よく見ていたテレビ番組は相撲中継という子供だったので、周りから付けられたあだ名は「おじいちゃん」。
落語にも自然と興味を惹かれていった。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の衝撃で開眼したクラシック映画愛_a
アマチュア落語家「鯉鮎亭ボタン」として日本各地で公演を行っていた12歳の頃

しかしいざ落語家になってみると、周囲にあまりにも同世代が少ないことに驚いた。
「もしかして自分ってちょっと変わってる?」
という遅すぎる気付きと同時に、
「こんなに面白いものをみんなが知らないのはもったいない! もっと伝えたい!」
と思うようになった。
それから同世代のクリエイターと共に「Z落語」というチームを結成し、落語とクラブカルチャーをMIXしたイベントを主催したり、日本の文化を感じさせるアパレルブランドを立ち上げたりして今に至る。

落語以外のカルチャーも昔から古いものや流行の外側にあるものを掘るのが好きで、古本屋やレコードショップでジャケ買いしたり、往年の名作映画をデジタルリマスター版で上映する「午前十時の映画祭」に通い詰めたりしていた。