――昨年『キングオブコント』で初の決勝進出を果たされました。少し前の話になってしまいますが、6位という結果は悔しさと嬉しさのどちらが強かったですか?
イワクラ 優勝した空気階段は同期ということもあって、めっちゃ悔しかったですね。
中野 そうですね。同世代で大きい大会で優勝した人がまだいなかったので、悔しさはありました。でも終わってたくさん褒めていただいたりして、それは素直に嬉しかったです。
イワクラ 初めて決勝にいってわかったことはいろいろあって、そこはめちゃくちゃ楽しかったです。今までは自分を鼓舞するために「優勝します」って言ってたんです。そう言っておかないと周りに気持ちで負けてると思ってて。でも実際に決勝いってみて、本当に絶対優勝できるなって思いました。
中野 『ABCお笑いグランプリ』で2回決勝にいって、2回とも3位で終わってるんです(2018年、2021年)。芸歴10年までの大会なので去年がラストだったんですけど、そこで「もう優勝はできないんだ」って、取り返しのつかない悔しさを味わったんですよね。『キングオブコント』は芸歴制限がないので出続けられはしますけど、あの悔しさはもう味わいたくないので優勝したいなと思います。
――賞レースに向けて「この1年はこういうことをやろう」など、コンビで話し合いはするんですか?
イワクラ 本当に2人ともだらしないんで、マネージャーさんと作家さんがいるLINEグループで「そろそろ次の単独をやろうか」とか言ってもらってます(笑)。
中野 2020年に東京に来たとき、コロナ禍だったこともあって珍しく作戦会議をして、4〜5年前に3本くらい投稿して終わっていたYouTubeを再始動させようという話になったんです。でも結局、その後お互い何も言い出さずに時間が経って……。半年後くらいに周りの方から「YouTubeやりませんか?」と言われてやっと動き出したくらいです。
――単独ライブのネタが出来上がるのもいつもギリギリだそうですね。今は単独『TOKYO PUBLIC NIGHT』東京公演3日前ですが(取材は3月16日に実施)、ネタは何割くらいできました?
イワクラ 4割くらいですかね……。
――過去には当日朝に出来上がるときもあったとか。
イワクラ そうですね。なので今までよりはマシになってます(笑)。
――そのタイミングで渡されて中野さんが覚えるのもすごいです。
中野 でも台本覚えるというよりは、「このキャラクターはどんなやつなんだろう」って解釈するような作業です。そこでイワクラの中にあるイメージ通りにできればほぼ大丈夫。できなかったらヤバいですね〜。僕からも出てこないし、イワクラも「全然違うんだけど」ってなるし。僕がやりやすいキャラにしてくれてはいるので、考えればたどり着けるところにはあるんですが、そこに僕がたどり着けるかどうかです。
「KOC絶対優勝する」その言葉は鼓舞から確信へ――蛙亭の変わったものと変わらないもの
ネタ番組を中心に活躍するお笑いコンビ・蛙亭。2021年は初めて『キングオブコント』決勝に進出し、トップバッターで大きなインパクトを残した。どんどん仕事が増えていく状況の中で、変わってきたもの、変わらないものとは――。
蛙亭単独ライブTOKYO PUBLIC NIGHT4/10 配信直前 インタビュー

(左から)中野周平、 イワクラ
テレビでの“正解”を教えてくれる師匠が欲しい
――2人はもともとテレビバラエティよりはネタ重視の志向だったんですか?
イワクラ テレビに出てる人ってポップでわかりやすいキャラクターで人気者だと思ってたんで、そこは無理だろうなと思ってました。私は自分のキャラクターとかわかんなかったんで……。だからネタだけ面白いのをつくれたらいいなって。
中野 僕はもともとめっちゃお笑いマニアってわけじゃなかったんですけど、ネタ番組やテレビコントや賞レース、ネタ番組を見てて芸人を目指したので、「ネタやりたい」が先にあったと思います。
――とはいえ、だんだんバラエティのお仕事も増えてきてますよね。
イワクラ すごい楽しくて、出るたびに「また次も頑張ろう」って思います。でもすごい世界だなとも思います。なんとか食らいついていきたいですね。
中野 いろんな番組出させてもらって「なるほど、こういうときはこう振る舞うんだ」って思うんですけど、全然身に付けられないこういう場面では中野だったらこうするのがいい」って教えてくれる師匠が欲しいですね。
――観ている側としては、2人とも存在感があると思いますが……。
中野 ありがとうございます。ポテンシャルはあるんですけど。
イワクラ (笑)。
中野 ちょっと、いかんせん発揮できてないですね。
――やってみてすごく楽しかった仕事はありますか?
イワクラ ロケとかですかね。東京に来てから何回か行かせてもらってて、やるたびにいろいろわかることがあります。でもいつも何をしたらいいのかわからなすぎて、普段テレビで見てる人たちはどうやってたんだ? って思いますね。毎回そんなレベル低い状態で出てるのはお恥ずかしいし、申し訳ない。
中野 僕はナレーションのお仕事をすることがちょっとだけありまして、それは楽しいです。初めてやらせてもらったときからずっと楽しくて、テレビを見ていてもナレーションが気になるようになったりして「あ、僕この仕事楽しいんだな」ってつくづく思います。今後も何かやらせていただきたいですね。
――声優の花澤香菜さんにも褒められて。
中野 そうなんです。本物ですよね。ナレ(ナレーション)録りの現場では「いや、もうプロじゃないですか!」とか言ってもらえるんで、勘違いするんですよ。このままいっちゃうんで、おべんちゃらかどうか早めに教えておいてほしいです。
イワクラの“カマし癖”は自分への鼓舞
――いろんなメディアで蛙亭さんを観ていて、イワクラさんは「カマしたい」人なのかな?とよく思うんです。
イワクラ カマし癖はありますね(笑)。もともとそういう性格だったというより、強めに言うことで自分を奮い立たせている感じです。時間がゆっくりした田舎で過ごしてたんで、感覚が違うところがあって。芸能界とか、賞レースもやっぱりほわーんとしている人は残らないし、闘争心を持っておかないと置いていかれちゃう。それでカマし癖がついちゃいました。
中野 単独ライブの告知コメントを求められて、絶対毎回「めちゃくちゃおもしろいことするんで観に来てください」みたいにめちゃめちゃカマすんですよ。言った後に「カマしちゃった……」って後悔したりしてる。
――仕事が増えてきたことでカマし癖に変化はないんですか?
イワクラ 前よりはちょっとマシになってるかもしれないです。今までは常にいろんなことにイライラしてたんですけど、ちょっとずつ仕事が増えてきて生活もできるようになってきたら、ムカつくことが減ってきました。それもヤバいというか、ボーッとしてたらダメだなと思います。
――対照的に中野さんはのんびりしていて、そういうイワクラさんを受け止める相方という関係性に見えます。そういうコンビ仲は変わらない?
中野 もしかしたらそれがどんどん極端になっていってるかもしれないですね。
イワクラ 周りの人は中野さんのことを「すべてを包み込んでくれる優しい相方」「穏やかでほわーんとした人柄」みたいに思ってるんです。でも、私はいちばん身近にいるからわかるんですけど、本当に何も考えてないだけなんでむっちゃくちゃ腹立ちますよ、ほんとに。ただ、最近ふと思ったことがあったんです。このあいだ、Dr.ハインリッヒさんと“波動”の話をしていて。
――Dr.ハインリッヒさんの漫才やトークによく出てくる概念ですね。
イワクラ そこで「楽しいことをしている人は波動が高くて、悪口や文句ばっかり言ってる人は波動が低い」って話になったんです。それまで中野さんって波動低い人間だと思ってたんですけど、自分の好きなことをしてノーストレスで生きてるのってめっちゃ波動高いんじゃないかってそのときに思って。「だから今いろいろ良い結果が出てるんだ」って気づいたとき、“嫌い”のレベルがちょっと減りました。
――中野さん、波動高かったんですね。
中野 波動が高いかはわかんないですけど、自分は主人公だと思ってますね。
イワクラ そうなんです。自分が主人公で生きてるから、暑いとか寒いとかそれぐらいのストレスしか感じてなくて、それがいちばんうらやましいんですよね。そういう部分をコントにしたときにめちゃくちゃ面白くなるなって思います。
――中野さんはご結婚されましたし、これから意識が変わっていくところもあるのでは?
イワクラ いや、そこも多分「絶対に食わしていくぞ」みたいなガッツはないですね。「えりちゃん(中野さんの配偶者)と一緒にいれたらいいや」ってだけで。
中野 なんで知ってるん?(笑)
イワクラ 奥さんには昔からすごいお世話になってるんで、自分がえりちゃん食わしていくぞって感覚でやってます(笑)。
中野 そうなると結局得するのは僕ですよねぇ。最高ですよね。
★単独ライブ『TOKYO PUBLIC NIGHT』大阪公演(4月10日 18:00〜)配信チケット発売中。
https://online-ticket.yoshimoto.co.jp/products/kaeruteitpn
撮影/松木宏祐 取材・文/斎藤岬

中野周平

イワクラ
