シャロン・ストーンを一気にスターダムに押し上げた『氷の微笑』(1992)。いや〜、あれからもう30年ですか。
確か前売り新記録の大ヒットとなった1992年公開当時は、裸もいとわない野心的なシャロン・ストーンを、マドンナの女優版みたいだと感じたこと、マイケル・ダグラスがディスコに行くシーンで、Vネックのセーターをいきなり素肌に着て、中年男のカジュアル姿が場違い感いっぱいだったこと。
それから試写室で1時間前に並んでも満席で、3度目のトライでようやく見ることができたことなど思い出深い作品でもあった。
なんだかんだいっても、人々はセックスシーン満載のエロい映画を見たいのよね。これは今も昔も同じ。なにしろ、映画は出だしから激しいセックスシーンで始まる。
裸のブロンド女が男の上で絶頂を迎えようとしているそのときに、女は男をアイスピックでめった刺し。刺激的で、つかみはガッツリな始まりだ。エロスとヴァイオレンスとミステリー。観客を惹きつける鉄板の組み合わせだが、監督のポール・ヴァーホーベンはヒッチコックの上品さを取っ払って、エロス多めのサービス精神が旺盛だ。

無修正R+18にて『氷の微笑4Kレストア版』劇場公開! 30年経っても気になる、スローモーションで確認したシャロン・ストーンの股間&マイケル・ダグラスの口パクパク
公開から30年。4Kレストア版で色鮮やかに蘇る『氷の微笑』の1992年公開当時の興奮を、石川三千花が振り返る。(トップ画像:© 1992STUDIOCANAL)
今も昔も人はエロい映画を見たいもの


刑事ニックを演じたマイケル・ダグラス
© 1992 STUDIOCANAL
物語は、ロックスターの殺人事件を捜査する刑事ニック(マイケル・ダグラス)が、人気作家で容疑者でもあるキャサリン(シャロン・ストーン)の色仕掛けにはまって彼女に翻弄されるというもの。
シャロン・ストーンが文字通り体を張ってマイケ・ダグラスを挑発しまくる。彼女が下着をつけずにワンピースを着て、刑事たちの前で脚を組み換える有名なシーンは、多くのパロディの対象になったほどだ。当然、シャロンの股間が見えていたかどうかも話題になったのだ。
はい、私なんてイラストを描く「プロ意識」から、ビデオテープをスローモーションでチェックしたものです。余計なお世話ですが、今回は4Kレストア版で公開なので、30年前にスッキリしなかった人にはリベンジのチャンスかも。
A級スターが体を張ったセックスシーン

シャロン・ストーン演じる容疑者に翻弄されていくニック
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さて、キャサリンは殺人事件の犯人なのか、それとも他に犯人はいるのか。ニックは、というかマイケル・ダグラスは、完全にシャロン・ストーン(キャサリンね)の虜になっていて、見ていると、頭では犯人だと疑っているのに、体はもう彼女をモノにしたい欲望で「もうどっちでもいいから、はやくやらせてくれ」状態。
じらされたマイケルが、自分に気がある犯罪心理医のベス(ジーン・トリプルホーン)を荒々しく抱くシーンは、男の身勝手さとパンツの早脱ぎに2度驚く。彼女の服を引きちぎり、背後から半ば犯すように攻めるマイケル。彼の頭の中は、シャロン・ストーンなわけね。
そりゃあ、「いつもと違うわ。別の女のことを考えていたんじゃない?」と、ベスは怒るわね。
見ちゃおれんほどシャロンへの欲望をムキダシにしていたマイケルが、ついに素肌にきたVネックセーターを脱いで彼女とのセックスにこぎつける。ここ、笑うとこじゃないのに、マイケルが片時も無駄にせず、ベッドに縛られている最中もシャロンの腕や胸にむしゃぶりつこうと口をパクパクさせてるとこがおかしくって、イラストに描かずにはいられないシーンだ。

このころのマイケルは、『危険な情事』(1987)でグレン・クローズ、『ディスクロージャー』(1994)でデミ・ムーアなど、強くて怖い女のセックスのお相手として、好色でタフな中年男を演れば絶好調だった。ここまであからさまにセックスシーンを演じたA級のベテランスターは、稀で貴重な存在だったと思う。
久しぶりに『氷の微笑』を鑑賞して、ズバリと観客の興味をそそる演出を楽しんだ。撮影監督は『スピード』(1994)を監督する前のヤン・デ・ボン。
サスペンス作品なのに、部屋に鍵がかかってなくて、必ず自分の部屋に先に誰か入っていたり、誰かが殺されるたびにシャロン・ストーンが悲しんでセックスをねだり、その後、いきなり冷たくなるというのを繰り返すなど、ツッコミどころだらけ。
だが、みんなの興味をそそる娯楽作品として、秀作に違いないと改めて思った。
イラスト・文/石川三千花
『氷の微笑 4Kレストア版』(1992)Basic Instinct 上映時間:2時間8分/アメリカ

監督:ポール・ヴァーホーヴェン 出演: マイケル・ダグラス、シャロン・ストーン、ジョージ・ズンザ
サンフランシスコの刑事、ニック(マイケル・ダグラス)はロックスター殺害事件の捜査に乗り出す。いくつかの不穏な痕跡から、当時のアリバイが不確かなキャサリンという作家(シャロン・ストーン)を尋問するが、享楽的な彼女に次第に翻弄されていく。駆け引き、愛、そして新たに起こる不可解な事件の数々。出口のない迷路にはまったニックが唯一頼れるのは、彼自身の本能だけだった……。
6月16日(金)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか公開
配給:ファインフィルムズ
© 1992 STUDIOCANAL