昭和の残り香漂う90年代、バブルは崩壊して日本経済は低迷するも、若者には勢いがありさまざまなアイテムやカルチャーが生まれた。
90年代に青春時代を過ごした人にとって、そうした平成文化はなじみ深いもの。しかし、Z世代にとってそれらはもはや紀元前のできごと⁉
今回はZ世代を代表して平成14年生まれで20歳、eggモデルのみりちゃむが登場! ガイド役に平成レトロ研究家の山下メロ氏を招き、Z世代にとっての昭和レトロと平成レトロの境界線を決めてもらった。
光るアンテナ、MD、ファービー…令和ギャル・みりちゃむが決める「昭和レトロ」と「平成レトロ」の境界線
Z世代にとって90年代の流行りやアイテムは、もはや “レトロ”……⁉ だが、彼、彼女たちはそもそも昭和レトロとの区別がついているのか? なつかしの90年代アイテムに、令和ギャルが“昭和っぽいもの”と“平成っぽいもの”の境界線を引く。
令和ギャルにはデジカメもレトロ⁉

“平成レトロ”という言葉をつくった平成レトロ研究家の山下メロ氏と、2002年生まれ、20歳の令和ギャル・みりちゃむ
――16歳まで平成を経験しているみりちゃむさんから見て、90年代の平成レトロとはどんなイメージ?
みりちゃむ おかんが元ギャルだったので、90年代の平成レトロはお母さん世代の文化ってイメージですね。
メロ 90年代のアイテムといえばどんなものを想像しますか?
みりちゃむ ガラケーとか……あとデジカメ!
――デジカメも⁉
みりちゃむ 一眼レフとかちゃんとしたのならいいですけど、みんなスマホですましちゃうから、今デジカメで撮ってる人見なくないですか⁉ あとビデオカメラとか。古いな~って思います。昔の人は持ち物が多かったイメージ(笑)。
メロ 今はスマホ1台あればなんとでもなりますからね。「写ルンです」(富士フイルムのレンズ付きフィルム)は知ってる?
みりちゃむ 知ってますよ。『egg』の企画でひとり1台渡されて自由に撮るっていうのがあったんで。現像するまでのドキドキがいいですよね。ちょっと前にチェキが流行ったので、それに近い感覚。

「写ルンです」はレトロブームもあって令和ギャルたちにもよく知られている
――みりちゃむさんから見て、昭和レトロと90年代の平成レトロの違いってなんですか?
みりちゃむ 自分が物心つく前の話はどちらも古臭く感じちゃいますよ。ただ、平成レトロはお母さん世代、昭和レトロはおばあちゃん世代の文化ってイメージです(笑)。
メロ お母さんはおいくつ?
みりちゃむ 46歳です。
メロ 若い‼
平成カルチャーはムダが多い?
――今回は山下メロさんのコレクションをはじめ、たくさんの平成レトログッズを用意しました。まずはみりちゃむさん的に“昭和っぽいもの”と“平成っぽいもの”の境界線を決めてもらいます。
みりちゃむ うちにあったのもある! 懐かし~‼

平成アイテムの中でも、「平成っぽいもの」と「昭和っぽいもの」を仕分けるみりちゃむ
メロ どれが見たことがありますか?
みりちゃむ あみあみパンプスは幼稚園のころに履いてました。このマイクがついてるやつ(マメカラ)は「オカザイル」で見ました。
それとファービーはおかんの友達の車に乗ってた。超怖かったんですよ、この目が(笑)。他にもちょこちょこ見覚えがあります。

大人気だったおしゃべり人形、ファービーにいまだにおっかなびっくり
――というわけで、境界線を引いてもらいました。左のブロックが昭和っぽいと?

たまごっち、光る携帯電話アンテナ、8センチCDは昭和のセンス?
みりちゃむ そうですね! あ、マメカラも昭和っぽいかも! 全体的なセンスが(笑)。
メロ マメカラは平成元年生まれですが、淡いパステルカラーの配色が昭和っぽいですね。
みりちゃむ そうそう! それがなんか古臭い!(笑)
――たまごっちも昭和っぽい?
みりちゃむ 今も最新のを持ってる人がけっこういて、それはイケてるけど、これはなんか80年代っぽいかなー。
メロ 8センチCDは厳密には昭和(63年)生まれですが、最盛期は90年代ということでラインナップに加えています。見たことない?
みりちゃむ ないですないです! 変なの! このムダなスペースはナニ?

8センチCDパッケージの網の目部分はなんのためのスペース?
メロ 昭和後期、シングルサイズの音楽メディアは7インチレコードが主流だったので、レコードショップが7インチレコードの棚を再利用できるように、ふたつ並べると7インチレコードと同じサイズになる短冊形のパッケージを採用したんです。
ちなみに網目部分を折れば、さらにコンパクトにできます。

コレクションをわざわざ折って実演。さらにコンパクトになった
みりちゃむ いや、そんなギミックいらないでしょ!(笑)

8センチCDをカーステレオなど縦型のトレイに入れやすくするためのCDシングルアダプター。これを見て、「昔の人ってマジでムダなことしてるね……暇だったのかな」とみりちゃむ。そう、90年代はムダなことばっかり。でも「そのムダが平成レトロの魅力」(山下メロ氏)
メロ ちなみに、8センチCDはたった2曲収録で1000円くらいします。
みりちゃむ 今ならSpotifyとかサブスクが月980円なのに⁉ コスパ悪っ!
メロ そして、90年代のポータブル音楽プレーヤーといえば、MDウォークマン!

カセットテープからMDへの進化は当時革新的だったが……
みりちゃむ 家にあった! DVDにしては小さいからコレなんだろうって思ってた。
メロ 昔はこれにレンタルしたCDを録音して、自分なりのミックスMDを作ってたんですよ。
みりちゃむ やっぱり昔の人は暇だ!
――デザイン的にイケてます?
みりちゃむ 平成っぽいけどイケてはないかな(笑)。
携帯電話のアンテナが光った90年代
メロ 平成は携帯電話もすごく進化しました。

懐かしのガラケーと光るアンテナ。一番右の機種はみりちゃむいわく、「子機」
みりちゃむ パカパカは見たことある! おかんのやつを麦茶の中に落として超怒られた(笑)。この家電(いえでん)の子機みたいなやつは昭和の?
――一応これも平成です。ポケベルは“平成っぽい”ですか?
みりちゃむ はい。おかんが高校時代にめっちゃ使ってたって話を聞いてたから(笑)。

昔はポケベルのメッセージを読み取るのもひと苦労。みりちゃむが電卓と間違えたポケメモダイヤラー(写真右上)は、公衆電話でダイヤルしてメッセージを発信するのが大変だったため、これにあらかじめメッセージを入力しておいて、流れるプッシュ音を受話器に聞かせると、その音を読み取って相手にメッセージが届くというシロモノ
メロ ポケベルの全盛期が96~97年ごろ。その後、PHSが普及し、すぐに携帯電話の時代になったんですが、その先陣を切ったのが子機っぽいといったストレートの端末。で、そのアンテナを光らせることができるのがコレ。

受信発信するときだけ点滅する光るアンテナ。そもそも令和ギャルは“バリ3”という言葉すらほぼ知らないそうだ
みりちゃむ アンテナを光らせる? 全然意味わかんない!
メロ 当時はスマホに個性を出すにはストラップをつけるか、アンテナを光らせるのが手っ取り早かった。ただ、パカパカ携帯になってしばらくしてアンテナが伸ばせなくなり、その後なくなったことで、このカルチャーも消滅。ちなみに、光るアンテナ登場当初は希望小売価格9800円!
みりちゃむ 高っ! こんなものに1万円を払うなんて、昔の人はお金持ちだったんだなぁ。
メロ 今持ってたらイケてると思いませんか?
みりちゃむ いや、いらないでしょ(笑)。

「口元まで送話口がくるのが当たり前だったから、スマホは最初のころ全然落ち着かなかった」(山下メロ氏)
――みりちゃむさんは初めて持った携帯がスマホ?
みりちゃむ はい。iPhone6だったかな。小学生でiPodが流行ってた気がする。
メロ 我々も年を取るわけだ……。

なぜかマメカラを手に対談を続けるみりちゃむ。彼女の令和ファッションと並ぶと、マメカラの昭和っぽい配色が際立つ
――ここまでたくさんの今はなき平成テクノロジーを解説してもらいましたが、令和でもイケてるアイテムはありましたか?
みりちゃむ イケてるやつは今でもちゃんと生き残ってますよね。「写ルンです」とか。
メロ じゃあ90年代に青春をすごしてみたいと思った?
みりちゃむ ううん、不便でしょうがないからイヤだ(笑)。
メロ ただ、いろいろユルイですよ。
みりちゃむ それはマジでズルイ! 炎上なんて概念がないのは超うらやましい(笑)。
――やっぱり今の若者は、炎上の恐怖に常におびえてるんですね(笑)。
取材・文/武松佑季 撮影/下城英悟
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