現在も新幹線では競艇場が見えないように反対側の席をとる

――治療プログラムを始めてからは依存状態とは完全に縁が切れているのですか。

私はギャンブルをやめて、19年ほど経ちますが、今でも自助グループへは毎月2回参加していて、12ステップもずっと続けています。これらは一生続けるべきもので「もう大丈夫だろう」と思ってやめてしまうと、再発する可能性が高くなるんです。実際にそういう人は大勢います。
私の夫も治療を始めた後に、FXに手を出して800万円の借金を背負ったこともありました。その後、またプログラムをやり直して、さすがにそれ以降は再発していません。

「ギャンブルに給料を全額使ってしまうんですが、自分は大丈夫でしょうか?」包丁をベッドに突き刺して話し合い、激高して投げ飛ばされたことも…。ギャンブル依存症問題を抱える人が増加し、問題が深刻化している理由_1
「ギャンブル依存症問題を考える会」代表・田中紀子さん
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――日常生活でギャンブルへの未練みたいなものを感じることはありますか。

競艇場が目に入るとドキドキしてしまう感覚はあります。なので、静岡県の浜名湖に競艇場がありますが、東海道新幹線に乗るときは競艇場が見えないように太平洋側の座席に座るようにしています。でも、いつか老人ホームに入ったら、健康麻雀ぐらいはいいでしょと思っている自分がまだいます。

――19年間の中でギャンブルをしたくなる場面もありそうですね。

20年近く経ってくると、自分の扱い方がわかってくるんですよ。私はストレスが溜まった時に、ドカンと行きたくなってしまいます。過去に、買い物依存症だった時期もあったんですが、つい最近も600万円のロレックスの時計を衝動的にほしくなって。それでハッと気づいて、ヤバイな、ストレスが溜まり過ぎているな、と。
ストレスと依存症って関係が深くて、ストレスを溜め過ぎると「気づいたらやっちゃってた」なんてことになりかねないので、ストレスを溜め過ぎないようにして、普段からいろいろなことを自助グループの仲間に相談するようにしています。