なぜ嬰児殺しは起きてしまったのか?

親が子供を出産後すぐに殺害することを「嬰児殺し」という。

毎年起きている虐待殺人事件の中でも、嬰児殺しは一定数を占めており、そのほぼすべてが母親による犯行だ。ネットニュースに公園のトイレや漫画喫茶で出産したなどという記事が載ると、よく「母親に障害があったのではないか」などというコメントが書き込まれる。これまで私は同様の事件を数多く取材してきたが、鑑定等で障害や病理が確認されることはごく稀だ。

それよりも、彼女たちに共通する他のことがある。それは、彼女たちの自己決定力が非常に弱いという点だ。そうなった原因の多くは、障害ではなく、家庭環境にある。どういうことなのか。自宅で2度にわたって出産し、殺害した女性の事件から、嬰児殺しのリアルを考えてみたい。