お金がなくて買った安い国産中古車が……

近年、価格が急騰している1980〜90年代製造のネオクラシック世代のクルマを購入した男性の話を紹介しよう。栃木県内に住む塚田拓哉さんは2005年、わずか19万円で走行距離13万kmのトヨタの1991年型スープラ(A70型)2.5GTツインターボリミテッドを購入した。

A70型の後続モデルであるA80型(1993〜2002年販売)は映画『ワイルド・スピード』で主人公が乗っていたこともあって世界中で人気に。海外のオークションでは昨年、『ワイルド・スピード』に登場した実車が約6000万円で取り引きされたことがニュースになった。それに比べれば、1986年発売のA70型はまだ高騰していないが、5年ほど前からじわじわと値を上げ、中古車市場では600万以上の値札をつけている個体もある。

「お金がなくて」19万円で買ったトヨタ中古車が30倍以上の値に⁉︎超高騰中の“ネオクラシックカー”の魅力と落とし穴(後編)_a
1991年型スープラ(A70型)2.5GTツインターボリミテッドを所有する塚田拓哉さん。日本最大級の旧車イベント「スタルジック2デイズ 2022」にて
「お金がなくて」19万円で買ったトヨタ中古車が30倍以上の値に⁉︎超高騰中の“ネオクラシックカー”の魅力と落とし穴(後編)_b
最高出力は280馬力。30年以上前のクルマだがきれいに維持されている

「19歳で免許を取った後に初めて購入したのが、このスープラでした。当時はお金がなかったですし、安い車を買って、2年ぐらいマニュアル車の練習をしようと思っていました。それで中古車屋をいろいろと回って、デジタルメーターに魅かれて、最終的にスープラに決めました。

僕の乗る2.5GTリミテッドの底値は2003年くらいで、その頃は10万円程度だったはず。A70型の2リッターモデルは今でこそ200万円オーバーになっていますが、当時の仲間内ではタダでもいいから持っていっていいよ、という世界でした(笑)。2.5GTリミテッドは僕にとって初めて買ったクルマで、普通に通勤で乗ったり、スノーボードに行ったり、友達と遊んだり……いろいろな思い出があります。それが気がついたら、いつの間にかすごい価格になっていたというのが正直な気持ちです」

それでも5~6年前までは100万円台で塚田さんと同じモデルの中古車を購入できた。実際、塚田さんは部品取り用として状態の悪かった2.5GTリミテッドを50万円台で購入し、旧車ショップのスタッフと共にメンテナンスを続けてきたという。しかし現在は価格が高騰。「今では部品取り用としてスープラを買うのは、普通のサラリーマンの僕には不可能です」と話していた。

「僕はこのクルマに一生乗ろうとは思っていないです。やっぱりメンテナンスにお金と時間がかかりますからね。とりあえず無理しないで乗れるところまでは頑張ろうかなと思っていますが、もう入手できない純正部品がありますので、今はなるべく乗らないようにしています。実は普段は地元で軽自動車に乗っているんですよ。スープラは天気のいい日にたまに乗るくらい。今の僕にとって、このスープラは盆栽のようなものです。時々手を入れて、見て楽しむ感じですね(笑)」