「ファスト教養」とはなにか

1056円で人々の不安を鎮める、意表をつく教養本_01
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「こら、集英社、なんてものを出すんだ!聞き捨てならんことが書かれているようだから、これは読まねばならんじゃないか」

『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』(レジー著/集英社)の広告を見たときの私のツイートである。

読んでみると、実際、意表を突く「教養本」だった。タイトルを見る限り、この本もインスタントに教養を身に着けるためのハウ・ツーものに見えるが、中身はまったくそうではない。

著者がやってのけたのは、世に溢れる「教養本」や「教養モノ動画」や「教養イベント」を片っ端から分析するという手間のかかる作業である。そしてこれらが、他人と差をつけるための道具、金儲けの手段、果てはその商材となっていることを見事に描き出した。

そして、ファスト教養なるものが、時代の潮流となった新自由主義の道具として使われていると言う。私のように、学生時代に古い時代の教養の洗礼を受けた世代は、そんなことだろうと思いつつ、横目で見ながら舌打ちしていたのだが、「ファスト教養」が、これほど多様なメディアを通じて拡散されているとは知らなかった。

日常生活で、何か不安があって、誰かとつながりたいと感じている人は、まず、本書を読むことをお勧めする。自己啓発をして成功したいとか、秒速で大金持ちになりたいとか、そういう気持ちにかられると、人はとんでもない大金をつぎ込む。

不安を餌にあなたに迫る「教養」は霊感商法の「壺」と同じである。この本は1056円で、その不安を鎮めてくれるのだから安いものだ。