早朝の始発電車で、放課後のファミレスで、観覧車の中で……日常の風景が一瞬にして変化し、展開される高校生たちの“5つ”の密室会話劇を描いた青崎有吾の小説『早朝始発の殺風景』(集英社文庫)がWOWOWにて連続ドラマ化。
物語の主人公・殺風景役と加藤木役を演じた山田杏奈と奥平大兼は、ほぼ全編ふたり芝居で、青春がもたらす気まずさや不安定な人間模様をみごとに演じきった。
予想外のセリフがあるからいいお芝居になった
――原作は、ミステリーにおける論理展開の緻密さから“平成のエラリー・クイーン”と評価される青崎有吾氏の小説です。そんな1冊をもとに書かれた脚本を最初に読まれたときの感想をお聞かせください。
奥平 僕はどの作品の脚本も1回目は普通に本を読む感覚で目を通すんですけど、セリフのかけ合いがおもしろいなと思いました。
そのあと自分が演じる役を意識しながら読むと、日常ではなかなか体験できないシーンが目にとまって、「ここはどんなふうに撮影するんだろう?」って、ひとりで想像していましたね。
殺風景をはじめ、自分以外の役をみなさんがどう演じられるのかもすごく楽しみになりました。
山田 私は会話劇の中でひとつの真実が見えてくるお話がすごく好きなので、楽しく読ませていただきました。
「青春はきっと、気まずさでできた密室だ。」というセリフがたびたび出てくるんですが、その言葉通り脚本の中にも気まずい時間がずっと流れていて、これが映像になったときに役者のみなさんはどう表現するんだろうってワクワクしたことを覚えています。
――殺風景と加藤木を演じる上でヒントになったものがあれば教えてください。
山田 この作品にかぎらず、小説って登場人物の心情が事細かに書かれているものが多いので、お芝居をするときヒントになることがあるんです。
今回もそれがすべてではないですけど、原作の小説をしっかり読ませてもらって参考にして演じた部分はありました。
奥平 僕はいちばん最初にお芝居を教えてもらったとき、監督に「何も考えてくるな」って言われたんです。そのやり方は今でも貫いていて、だから今回も自分のセリフは暗記するけど、脚本に書かれた相手のセリフや出番がないシーンはできるだけ見ないようにしていました。
現場で初めてセリフを聞くことで、「こう言われたから自分は次にあのセリフを言うんだ」って腑に落ちて、わりと何も考えなくてもナチュラルにお芝居ができるんです。
山田 相手のセリフを見すぎないっていうのは、私もよくわかります。段取り(本番前に行われるリハーサル)のときに相手のセリフはあやふやなままお芝居して、そこで感じた「あ、私の役はこう思うんだ」っていうのがヒントになったりするので。
奥平 特に殺風景は予想外のことを言ってくることが多かったから、知らなくてよかったなって思いましたね。
山田 たしかに。奥平くんが毎回フレッシュな反応をしてくれたおかげで、ふたりですごくいいお芝居ができたという感覚がありました。