岸田首相はいつまで「検討」を続けるのか
古賀 デフレ脱却のために金融緩和や財政出動がある程度必要だったということは僕も理解している。ただ、アベノミクスはその第1の矢と第2の矢が飛んでいる最初のうちに、第3の矢を射ることができなかった。というか、そもそもその「絵」がなかった。それは致命的な失敗です。
高橋 もちろん私もアベノミクスですべてが成功したと言うつもりはない。第3の矢が飛ばなかったという古賀さんの指摘は一部その通りです。でも足を引っ張ったのは2度の消費税増税と「カケ」騒ぎで規制改革が進まなかったからでしょう。それらがなければ、もっと早くに景気が回復し、2%の物価上昇やデフレ脱却という目標は達成できていたはずだと私は思ってます。
古賀さんも知っている私の知り合いは、安倍政権で規制改革をやっていたのですが、「カケ」騒ぎになったら、一部野党からその人も攻撃をされ、規制改革も開店休業状態になったと言っていました。
また、当時、安倍さんに「消費増税だけはいけません」と何度も進言したんだけど、「わかってる。わかってるけど、消費税上げは民主党政時代からの決まり事で、自分の政治パワーをもってしても抗えないんだ」と言っていた。今となってはそれがすごく印象に残ってますね。
――岸田政権が発足して1年になりますが、アベノミクスの継承も含めて、おふたりは岸田首相の政策をどのように評価していますか?
高橋 検討ばかりの印象だ。「深く検討する」「さらに検討する」「検討を加速する」って、検討のバージョンはたくさんあるけど、検討しかしてないんだから評価のしようがない。そうこうしているうちに国葬問題で支持率が危険水域まで下がった。こうなったら、もう政策どころじゃない。
古賀 これまでは原発への依存度を下げると訴えていた岸田政権だが、電力危機を煽ったあげく、8月末に原発新増設の方針を打ち出した。「決められない男」と言われた岸田さんが、あの安倍さんですら言えなかったことを言ったのは、ある意味すごい。すごいというのは正しいという意味じゃないんだけど(苦笑)。
ただ、国民は、電力危機対応で原発再稼働までは理解を示すかもしれないけど、新増設まで打ち出せば、かなり反対するんじゃないかと僕は思っていて、経済界などにおだてられて、そこを読み間違えて動くと、政権の命とりになるかもしれない。
撮影/村上庄吾