「私立のために作られた大会」
「甲子園は私立のために作られた大会だと感じてしまいました」
その言葉を聞いたのは、ある年に甲子園初出場を遂げた公立高校の監督からだった。そのチームは甲子園初戦で名門校相手に大敗を喫していた。
監督に対して「そんな寂しいことを言わないでくださいよ」と言いたかったが、胸を張って伝えられない自分もいた。
2022年春に行われた第94回選抜高等学校野球大会(センバツ)で大阪桐蔭が18対1と圧倒的な力で決勝戦を制したシーンを見て、冒頭の監督の言葉が蘇ってきた。甲子園ベスト4に進出したチームはいずれも私立高校だった。
本来、高校野球を「公立か、私立か」の種別で語ることに大きな意味などないはずだ。私立校のすべてが逸材を積極的にリクルートしているわけではないし、公立校であっても有望な選手が集まりやすい学校もある。何かしらの特色を伸ばすことに長けた高校もあれば、文武両道を掲げる高校もある。学費の高い高校も、安い高校もある。生徒はそれぞれの条件に合った高校を選べばいいだけの話で、「いい」「悪い」の二元論で語られるものではない。
それでも、高校野球ファンの間で、「公立か、私立か」は絶えず議論の種になる。判官贔屓の文化が根強くあり、公立校は人気を得やすい。