出演作を待ちわびる映画スター

性的描写は10分に1回。松居大悟監督が“ロマンポルノ”の制約の中で描いた普遍的な愛_8

――「ロードショー」は1972年に創刊された映画専門誌です。時代を象徴する映画スターを数多く取り上げてきた歴史がありますが、みなさんにとっての映画スターは?

松居 ライアン・ゴズリングですかね。

金子 大好き!

松居 彼が出演している作品は、映画を見にいくというよりも、ライアン・ゴズリングを見にいくみたいな気持ちがあります。好きな映画は『ラースとその彼女』(2007)。でも『ブルーバレンタイン』(2010)もやっぱりいいな。同じ人のはずなのに、映画の中で全然雰囲気が違って見えて、この人面白いなって思いました。

金子 目がいいですよね。

――演出してみたいと思いますか?

松居 ああー、してみたいっすね!

金子 オファーしてみてください(笑)。

福永 私は高峰秀子さんがすごく好きです。木下恵介監督や、成瀬巳喜男監督の作品に何度も出演されていて。これだけ同じ監督に何度も「一緒にやろう」と言ってもらえるのは、お芝居はもちろん、人柄の良さも絶対にあったんだろうなって思って。スターだなと思いますね。特に好きなのは『カルメン故郷に帰る』(1951)。すごくチャーミングだし、主人公の自由に生きている感じがすごく可愛らしかったです。

金子 僕はベネディクト・カンバーバッチかな。『ホビット』(2012〜2014)シリーズでドラゴンを演じていて、メイキング映像を見たことがあるんです。顔にモーションキャプチャーの印をつけて、床に腹ばいになってすごい形相でお芝居をしていて。この人、ものすごいなと思いました。

松居 僕、ちょっと変えていいですか。やっぱりジム・キャリーにします(笑)。コメディができてシリアスな演技もできるのは、やっぱり映画スターですよね。あとはジョナ・ヒルも好き。

福永 あ、私はアーミル・カーンも好きです。

松居 『きっと、うまくいく』(2009)のね。

福永 1年に1回くらいしか役を引き受けないそうなんです。その分、1年くらいかけて役の準備をするみたいで。彼が出演する作品は絶対に面白いから、インドの人たちは出演作を楽しみにしているそう。それこそスターだなって。

松居 そうだよね。そういう意味で言ったら渥美清さんだって。

金子 渥美さんはスターですね! あと田中邦衛さんも大好きです。もう、挙げだしたら止まらないですね(笑)。

『手』(2022) 上映時間:1時間39分/日本

中年男性の写真を撮ってはコレクションするのが趣味のさわ子(福永朱梨)は、これまで付き合ってきた男性も年上ばかり。それなのに、なぜか父親とはうまく話せず、ぎくしゃくとした関係が続いていた。そんな彼女が、同年代の同僚・森(金子大地)との距離が縮まっていくにつれて、次第に心境に変化が訪れる。山崎ナオコーラの小説を原作に映画化。

9月16日(金)より全国順次公開
©2022日活
配給:日活

松居大悟
まつい だいご
1985年11月2日生まれ、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。主な監督作は『アフロ田中』(2012)『ワンダフルワールドエンド』『私たちのハァハァ』(2015)『アズミ・ハルコは行方不明』(2016)『バイプレイヤーズ』シリーズ(2017〜2021)『くれなずめ』(2021)『ちょっと思い出しただけ』(2022)など。

福永朱梨
ふくなが あかり
1994年12月7日生まれ、広島県出身。主な映画の出演作は『君の膵臓をたべたい』(2017)『彼女はひとり』(2018)『君は月夜に光り輝く』(2019)『本気のしるし』(2020)『LOVE LIFE』(2022)など

金子大地
かねこ だいち
1996年9月26日生まれ、北海道出身。主な出演作はドラマ『おっさんずラブ』(2018)『腐女子、うっかりゲイに告る。』(2019)『鎌倉殿の13人』『魔法のリノベ』(2022)、映画『猿楽町で会いましょう』(2021)『サマーフィルムにのって』(2021)『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(2021)など。

取材・文/松山梢 撮影/小田原リエ ヘアメイク(金子さん)/Taro Yoshida(W)スタイリスト(金子さん)/千野潤也(UM)