65歳以上の5人に1人は認知症に...その予防には「運動と睡眠」がカギとなる_1
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運動と睡眠で「認知症リスク」を減らせるかも?

年齢を重ねるごとに気になってくる「認知症リスク」。その対策に「運動」は有効なのでしょうか。結論から言うと、多くの観察研究によって「運動と認知症との間に何らかの関連性はありそうだ」ということがわかっています(※1)。

「明らかに予防効果がある」というところまでは科学的に結論付けられていないものの、「運動をしている人の方が認知症は少なそうだ」ということは言えます。

そもそも「運動は健康にいい」と言われる背景には、じつに多種多様な科学的根拠があります。運動は、死亡、心血管疾患、高血圧などのリスク低下と関連するだけでなく、肺がん、乳がん、膵臓がんなどのリスク低下との関連も示唆されています。さらに運動には、睡眠の質を改善してくれる効果も期待できます。

じつはこの睡眠も、認知症のリスクに関連があると見られています。8000人ものデータを追いかけた、睡眠と認知症に関する研究(※2)では、被験者を50歳の時から25年間観察し、睡眠時間の長さによって認知症の発症に違いがあるかを調べました。

ここでは平均の睡眠時間が6時間以下のショートスリーパー、7時間のノーマルスリーパー、8時間以上のロングスリーパーに区分。すると、中高年の時期にノーマルスリーパーの人は、ショートスリーパーの人よりも認知症のリスクが低下して見られることがわかりました。

睡眠時間という一面だけで断言はできませんが、この研究から見えてきたのは「平均すると7時間は睡眠をとるという生活リズムが、認知症リスクが低いことと関連していそうだ」ということです。

運動には、睡眠の質を改善する効果が期待できる、とお話しましたが、よく眠れることも「認知症リスクを低下させる」ことにつながるなら、2つの意味で運動はしないよりした方がいい、と言えるのではないでしょうか。

<参考文献>
※1
DeFina LF, Willis BL, Radford NB, et al.  e association between midlife cardiorespiratory tness levels and later-life dementia: a cohort study. Ann Intern Med 2013; 158: 162-8.

※2
Sabia S, Fayosse A, Dumurgier J, et al. Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia. Nat Commun 2021; 122289