どんな仕事も必ず「本当のこと」を入れたい
――大森監督が映画製作発表時のコメントで、西島さんに自分を超えていこうとする気配を感じたとおっしゃっていましたが、表現者として突破したと感じた瞬間はありましたか?
監督がそう感じてくれたのは嬉しいですけど、あったのかな……でも、自分の想像を超えたところに行きたいっていう気持ちは、どの現場でもありますね。完成した映画を観て自分がこういうシーンになるだろうなと思ったものと全然違うものになっていたときはすごく嬉しいです。
――西島さんは、今作のような突き抜けた表現に満ちた映画の世界と、連続ドラマのような、あえて言うとさわやかな世界を華麗に行き来されている稀有な存在だと思いますが、西島さんが演者として考える、映画とドラマの魅力は何ですか?
観てくださる方がどんな方たちで、どういうふうに観てるのかっていうのは、毎回、想像しながら作品に向かっています。仕事から帰ってきて家でテレビをつけて観るドラマと、決まった時間や場所で観る映画では楽しみ方も違うし、バイオレンス色の強いエンターテインメントと、テレビドラマっていうのも全然違うものですし。
でも、どんなにさわやかなドラマにも、生きる中での葛藤や、本当のことというのは絶対に見つけて入れたいと思っています。今回のようなジャンル映画に近い作品でも、バイオレンスでもスタイリッシュでもない、カッコ悪いかもしれないけど、生々しくて人間らしいものは入れたくて。どこに行っても1個は必ず、本当のことを入れてやるっていう気持ちはありますね。
――ドラマに映画に、バラエティへの出演にとたくさんお仕事をされていますが、今、西島さんを表現へと突き動かしているものは何でしょうか?
僕自身、仕事がない頃に、映画に救われてきたんですよね。毎日とにかく映画館に行って、何本も映画を観て、何かをやったという実感を得て、感動して。映画で世界の人たちの考え方や文化を知った時間が、今、思うとすごく豊かでした。戻れるものなら戻りたいぐらいです(笑)。
もうダメじゃないかっていうときも映画に救われたことがあったので、特に若い人たちにそういう経験をしてもらえる作品を目指してやっていきたいとはいつも思っていますね。
――最後に、西島さんが好きなバイオレンス・アクション映画を教えてください。
僕は、『男たちの挽歌』です。この間も「これはちょっと気合い入れなきゃ」って思って、1と2を観直しました。
――いいですね。気合いが入るんですね!
はい。観ると気合いが入ります(笑)。
取材・文/川辺美希 撮影/井上たろう
ヘアメイク/亀田雅 スタイリスト/カワサキタカフミ
『グッバイ・クルエル・ワールド』(2022) 上映時間:2時間7分/日本
9月9日(金)より全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
ⓒ 2022『グッバイ・クルエル・ワールド』製作委員会
公式サイト
https://happinet-phantom.com/gcw