専業主婦が再就職することは難しい

2億円というのは、もちろん私が勝手に決めた数字ではありません。厚生労働省所管の調査機関、労働政策研究・研修機構のデータで、大学・大学院を卒業した平均的な女性が正社員として60歳まで働いたときの生涯賃金は2億1800万円となっています。

この金額には退職金は含まれておらず、いまは年金が支給される65歳まで再雇用で働くのがふつうですから、それを加えれば専業主婦になることで失う収入は2億5000万円から3億円ということになります。

子育てが一段落してから働く女性も増えています。ニッセイ基礎研究所の試算によれば、大卒女性が2度の出産を経て正社員として働きつづけるとして、育休や時短を利用しても生涯収入は2億円を超えますが、第1子出産後に退職し、第2子の子育てが落ち着いてからパートで再就職した場合の生涯収入は6000万円にとどまります。

1億4000万円もの差が生じる理由は、日本では専業主婦が再就職してもパートや非正規の仕事しかないからです。ここからわかるのは、専業主婦になって2億円をドブに捨てることはもちろん、いったん会社を辞めて、子育て後にパートで働いたとしても、その損失はとてつもなく大きいということです。

もちろん、「夫や子どもへの愛情は2億円を超える!」という女性はいるでしょう。でもその一方で、家庭生活に満足している女性の割合を国際比較すると、共働きが当たり前のアメリカでは67%、イギリスでは72%の女性が「満足」と答えているのに、日本はたった46%というデータもあります。

若い女性の多くが専業主婦に憧れ、その夢を実現したにもかかわらず、彼女たちの幸福度はものすごく低いのが日本の現実です。これが「好きで専業主婦をやってるわけじゃない」という批判が出てくる理由でしょう。