「子育て中はガマンしなよ」という風潮を変えたい

――先月「こども家庭庁」の設置が決まりました。こども家庭庁は、子どもに関する政策を社会の中心に据える「こどもまんなか社会」を掲げています。その実現のため、何が必要だとお考えですか。

僕は政治には疎いので偉そうなことは言えませんが、「データに基づいた現状認識」は必要だと感じます。

少子化対策にいくら力を入れても、今日明日に子供が増えることはないじゃないですか。子どもに関する政策は、50〜60年のスパンで向き合うべきものだと思います。現状を把握して長期的な計画を立てるためには、データの活用が必要です。有識者や当事者の声を聞きつつ、健全な批判精神を持ってデータ面からも検証するのが良いのではないでしょうか。

mamaroは現在、エリア別のmamaro利用状況データなど複数のデータを獲得しています。これを分析すれば、どの導線上に何台mamaroを設置すれば、ママさんやパパさんに利用されやすいのかが分かるんです。今後は大学などと連携しながら、収集したデータを元に「子育て世帯がお出かけしやすい都市計画」を研究したいとも思っています。

こども家庭庁には、僕たちのような民間企業やNPOなどが持つデータをうまく活用して政策を進めてほしいと期待しています。

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――今後mamaroを通じてどのような社会を実現していきたいですか。

子育て中は生活圏が小さくなりがちで、そのことにストレスを感じる親たちは少なくありません。「子育て中なんだから、2〜3年はガマンしなよ」という風潮は、嫌なんですよね。だから、子育て中でもお出かけしやすい社会を作ればいいと思うんですよ。

最近は「子育てしやすいエリア」が人気とも言われますが、一部のエリアだけに子育て世帯が集中しても、結局は昔の団地政策と同じ末路を辿るだけのような気もします。

であれば、日本全国で同じような利便性を確保して、どこでも子育てがしやすい環境を作っていきたいなと。僕はそんな社会の実現を目指したいと思います。

取材・文/島袋龍太 写真/白井絢香