麻雀プロとして麻雀を打ち、取材を受け、YouTubeチャンネルの配信を行い、忙しくお仕事をさせてもらっていますが、決して私も順風満帆ではありません。麻雀は運が勝敗を左右することもある競技なので、自分に運が向いていないと感じることや、仕事ではうまくいかず落ち込んでしまうことも多々あります。
昔から読書は好きで、活字も漫画も、たくさんの作品にふれてきました。基本的に自分が「イケてるな!」と好調を感じているときは、成功者のビジネス本や流行の本を読み、さらにテンションを上げます。逆に不調時にそれらの本を選んでしまうと「なんて自分はダメなんだ」とネガティブになってしまうため、あえて避けます。
そして、不調を感じているときに読みたいものがふたつあって、ひとつは東野圭吾さんの『白夜行』です。
これは昔から大好きな作品ですね。誰かのために尽くし、その結果堕ちていく人の生きざまを非常にうまく描いた作品で、悲しいストーリーです。これを読んでいると「自分のために頑張るのは当たり前だな」とか、ときには「自分のほうがまだまだ幸せだな」と感じます。主人公はとても運のない、報われない人間なのですが、その生きざまを見ることで、今の自分の悩みや苦しみはちっぽけなものに感じられるのです。
もうひとつは少し意外に思われるかもしれませんが、ANAの飛行機の中にある機内誌「翼の王国」で連載されている「おべんとうの時間」というエッセイです。連載をまとめたものが単行本になっています。
誰かの人生にスポットを当てて、その人がどんなお弁当を食べているのか紹介するという内容なのですが、わずか2ページ程度、読むのに5分もかからないこの読み物が私はとても好きです。コロナ前は年間20回以上は飛行機に乗り遠征のお仕事をしていましたが、いつもこのエッセイを読むのが楽しみで……! 読むたびに「人の幸せの形は無限にあるんだな」ということがわかり、勇気づけられました。
私はいつも、麻雀で勝つためには「自分視点、相手視点、第三者視点」という「3つの視点」を持つことが大事だと考えています。自分だけのモノの見方ではなく、対局者や観戦者から見てどうなんだ、という視点が麻雀には欠かせません。いろんな角度から物事を考え、誰かの立場に立ってその感情や感覚を味わうことができる読書は、この「3つの視点」を養うために大切なものなのかもしれませんね。