国民が求めているのは「面白さ」なのか

こうした政府のSNS発信をめぐる議論は、農水省だけの話ではない。

集英社オンラインでは9月22日、「国民が知りたいのは広報官のセンスではない」と題し、内閣広報官の公式Xに投稿された写真をめぐる反響を取り上げた。

問題になったのは、内閣改造時の記念撮影を大胆に加工した写真だ。全体をモノクロ調にし、赤絨毯の部分だけに色を残すという、映画のポスターを思わせる演出だった。

9月20日に投稿された内閣改造の際の写真(写真/内閣広報官Xより)
9月20日に投稿された内閣改造の際の写真(写真/内閣広報官Xより)

これに対してSNSでは「こんな加工いらないだろ」「国民が知りたいのは新大臣の顔ぶれ」といった批判が寄せられた。

写真そのものに重大な誤りがあったわけではない。それでも、政府が何を伝えようとしているのかという点で、疑問を持つ人がいたのだ。

農水省のダンス動画と内閣広報官の写真には、共通する問いがある。

それは、「見てもらうための工夫」と「本来伝えるべき情報」のどちらが主役なのか、という問題だ。

例えば、農水省には食料の安定供給や農業政策、食品の安全確保など、国民生活に直結する重要な役割がある。そうした仕事を知ってもらうため、難しい制度をわかりやすく説明したり、普段は見えない職員の仕事を紹介したりすることには大きな意味がある。

実際、農水省は2025年の取材で、BUZZ MAFFを重要な広報ツールの一つと位置づけ、米の流通や備蓄米などについても動画で説明していると紹介していた。BUZZ MAFFを単なる娯楽動画の集まりと評価するのも正確ではない。

一方で、ダンスや派手な演出が注目を集めても、そこから政策や行政への理解につながらなければ、広報としての成果は見えにくい。

とりわけ国の機関による情報発信には、民間企業の宣伝とは異なる責任が伴う。民間企業ならば、ブランドの知名度を高めること自体が目的になり得る。しかし、行政広報は国民の税金や公的な人員・設備を用いて行われる以上、その意義を説明できなければならない。

もちろん、職員が踊ること自体を問題視する必要はない。問われるべきなのは、「その動画によって、国民に何が伝わったのか」という点ではないだろうか。