すべての手拍子がダメなわけではない
坂口のライブで手拍子が起こるのは、ワンマンライブよりも、初めて坂口を見る人が多いイベントライブでのことがほとんどだという。観客は曲を知らないまま、聞こえてきた音に合わせて手を叩きだす。
「曲調を聞いて『明るい曲だ、盛り上げよう』と思ってくれているのでしょうし、その気持ちはありがたいです。ただ実際には、悲しい曲や怒りの曲だったりもします。歌詞と合わない手拍子によって、楽曲やライブの世界観が壊れてしまうことがあります」
ただもちろんだが、すべての手拍子がダメなわけではない。ライブハウスには、手拍子を煽る演者も、自然に始まった手拍子を受け入れて盛り上げる演者もいる。
坂口自身ももちろん、手拍子をうれしく感じることもある。その中でも印象に残っているのが、小さな子どもの手拍子だったそうだ。
「周りがしているからではなく、その子がしたくてしているのが素敵でした。手拍子は本能的で自然な反応なのかもしれないと思うと、愛おしくも感じます」
では、歌い始める前に「この曲は手拍子を控えてほしい」と伝えるのはどうか。坂口は、何千人も入るステージなら事前にアナウンスしてもいいかもしれないとしつつ、小さな会場では、そうした注意からライブを始めることに抵抗があるという。
「歌う前に自分の口からしてほしくないことや注意点などを伝えることは、鑑賞の仕方を強要したり制限することになりかねないですし、私はあまり好きではありません。
ライブの第一声が歌ではなく注意点の説明だったら、私なら『わあ、なんか嫌な感じ。めんどくさ』と思います。演奏だけでなく、MCの空気も含めてライブですからね」
客席からの参加をめぐっては、今年8月にも、ライブ中に観客が大声で歌うことについて、演者の歌を聴きたい人と、一緒に歌って楽しみたい人の間で議論が起きた。手拍子にも歌声にも、どんなライブでも通用する一つの答えはなさそうだ。












