善玉、悪玉、日和見

そうした、僕たちの体内に存在するバクテリアの生態系の中で、最も巨大で有名かつ数多く研究されてきたものが、腸内細菌叢(腸内フローラ:gut microbiota)である。その構成員が腸内細菌と呼ばれるものだ。

腸内細菌として最も有名なものは大腸菌(Escherichia coli)であろう。

大腸菌の検出数が水の汚染基準にも使われたりするから、一般的なイメージとしては悪玉菌のそれではあるけれども、大腸菌そのものが何かとても人に対して悪いことをするからということではなく、糞便中に大量に含まれることから、糞便が川の水などに流れ込んでいるという前提で水の汚染基準に使われているに過ぎない。

大腸菌はむしろ、僕たちの腸内で重要な栄養素の代謝に関わったり、それこそ病気を起こす悪いバクテリアが増えるのを抑えていたりするから、善玉菌の部類に入る。

もちろん中には腸管出血性大腸菌のように人に対して悪さをするものもいるが、一般に大腸菌は無害なものの方が多いと考えられている。

ただ、腸内フローラにおける大腸菌の割合はそれほど高くない。「大腸」菌という名称なのに、じつは腸内ではマイナーなバクテリアなのである。

じゃあ、腸内フローラにおいて最も大量に存在するバクテリアはいったい何かと言うと、こちらはあまり有名ではないが、フラジリス菌(Bacteroides fragilis)と呼ばれるバクテリアである。こちらも大腸菌と同様、悪さをしないものがほとんどなのだけれど、時々毒素を生産するやつもいるらしい。

ビフィズス菌も、腸内細菌として有名なバクテリアの一つだが、これは複数の種類の総称である。糖を分解して乳酸を作る乳酸菌の仲間だ。

一般に誤解があるようだが、乳酸菌=ビフィズス菌ではない。ビフィズス菌は、正式にはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)というバクテリアで、一方、乳酸菌の代表としてよく知られるのは、ラクトバチルス(Lactobacillus)と呼ばれるバクテリアである。こちらも腸内フローラの一員だ。

エンテロコッカス(Enterococcus)というバクテリアも乳酸菌の一つだが、こちらは善玉菌というより日和見菌である。言わば「強い方につく」という連中だ。

このように、善玉、悪玉、日和見と、これらは僕たち人間から見た場合のイメージに過ぎないけれども、様々な性質をもつバクテリアたちが棲まう世界。それが腸内細菌叢(腸内フローラ)なのである。

そのバランスがとられることによって、腸内フローラは僕たち宿主によい影響を与えてくれている。だから、彼らのバランスをとるような食事をすることが、僕たちの健康にとても重要になってくるのである。

写真はイメージです
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