ヒトと共生する微生物
僕たち人間は、社会性生物である。
人間社会という(他にも言い方はたくさんあるだろうが)特異な社会を作り上げ、地球生態系からはある意味、隔絶された独自の集合体を作っている。
確かにそれはそうだ。人間社会には、ペットとか家畜、観葉植物などの「ヒトとは異なる種の生物」が入り込んでいるけれども、基本的に人間たちは、この世界は人間のものだと思い込んでいる。人間は、自分たちがこの世界を、そしてこの地球をすべて支配していると思い込んでいる。
人間が勝手に国境を作り、国土なる言い方で分割していること、山を所有するだのしないだの、島を所有するだのしないだの、まるで大自然ですら人間が所有するものだ、みたいな風潮でこの世界が成り立っていると言っても過言ではない。
しかし、僕たちは思い違いをしている。僕たち人間のこの体の中に、外に、そして表面に、様々な目に見えない生物、すなわち微生物が大量に棲息していて、しかもその生物たちがいなければ、僕たち人間は生きていけないからである。
たとえば僕たちの皮膚の表面には、常在細菌と呼ばれるバクテリアが大量にいる。第一章でS教授が変身したブドウ球菌は、その代表である。
ブドウ球菌は普段は僕たちに悪さをすることなく、普通に僕たちの皮膚を棲処として生きている。彼らがいるおかげで、これまでヒトとは何の関係もなかった、しかしヒトに悪い影響をもたらす悪玉バクテリアが入り込み、繁殖する余地がないのである。
こうした常在細菌は、皮膚表面のみならず、涙腺や汗腺などの分泌腺や、鼻腔、口空内にもたくさんいて、それぞれの環境で、それぞれ独自のバクテリアの生態系を作っていると言ってもいい。
バクテリアの生態系がもしなくなれば、僕たちは一瞬たりとも生きていけないとさえ考えられている。僕たち人間の個体(大人の場合)は三七兆個とも言われる細胞でできているが、体内に棲まうバクテリアの総数は、それをはるかに上回るとも言われる。それほど重要なものなのだ。













