“マツケンバス”がお出迎え

最寄り駅の八景島駅へと降り立つ。駅と駅前にマツケン色はない。島がまるごとテーマパークなのが売りのシーパラ。駅から島内に入るには八景大橋という100メートル超の橋を歩いて渡らなくてはいけない。橋上は遮るものがないため、海風が直に体を襲う。午後から荒れ模様との予報だったこの日は、風もひとしお強い。

そんな強風を切り裂いて現れたのが、マツケンだった。

迫りくるマツケンバス。口を大きく開けている様がシュールさ増し増し
迫りくるマツケンバス。口を大きく開けている様がシュールさ増し増し

正確にはマツケンにデコられた島内周遊バスだった。『草競馬』のメロディを鳴らしながら(そこは『マツケンサンバⅡ』じゃないんかい!)、来園者へここから先にカオスが待ち構えていることを告げている。

“過剰没入型エンターテインメント空間”の狙い

島に一歩足を踏み入れると、俄然マツケン色が強くなる。橋を渡り切ってすぐ見えてくる子供向けアトラクションエリア「プレジャーランド」は完全に上様の支配下。園内BGMは当然『マツケンサンバⅡ』(たまに『暴れん坊将軍 メインテーマ』や代表曲の『星空のハネムーン』『夢灯り』など)だ。

子供、泣いちゃわない?
子供、泣いちゃわない?

“過剰没入型エンターテインメント空間”なんて新語をつくってまでイベントを盛り上げようとするシーパラ。開業して33年、首都圏の大型水族館の中では老舗に分類されるだけに経営に行き詰ってるのかといえばそんなことはなく、当園の事業戦略・広報担当の長谷川拓さんいわく、「近年のマーケティングにおいて、SNSの拡散力は無視できません。松平健さんと『マツケンサンバⅡ』の明るさ、活力をお借りし、SNSで誰かに報告したくなるようなとにかくユニークな企画を目指しました」ということらしい。

シーパラがこれまでコラボしたのは『あつまれ どうぶつの森』や『スプラトゥーン3』『SPY×FAMILY』といった人気のゲーム・アニメコンテンツ。それがいきなりマツケンである。どんな企画会議だったのか見てみたかった。もしかしたらみんな徹夜明けだったのかもしれない。

さて、シーパラのメインコンテンツは水族館。もちろん、ここもマツケンにまみれている。中でも700種類、12万点の海の生物が飼育展示されるアクアミュージアムは特筆。「どこにいてもマツケン」「何をしてもマツケンサンバ」という極端な世界観が繰り広げられていた。

タツノオトシゴにだる絡みされるマツケン
タツノオトシゴにだる絡みされるマツケン
「私たち、何を見せられているの…?」と言いたげな女性客2人組とマツケン水槽
「私たち、何を見せられているの…?」と言いたげな女性客2人組とマツケン水槽

水槽を撮ろうとすると必ずマツケンがフレームインしてくる。これが流行りのぬい活か(絶対ちがう)。

ぬい活ならぬ“マツ活”
ぬい活ならぬ“マツ活”

気づけば頭の中で『マツケンサンバⅡ』(たまに『暴れん坊将軍』のテーマ)がエンドレスリピートされ、水槽をのぞき込むと「へー魚もいるじゃん!」とか本末転倒な感想がよぎるようになってきた。末期だ。

若いギャルがすれ違いざま、「もっとかわいいのとコラボしてほしかった~」と嘆く声が耳に入ってきたが、彼女はわかっていない。マツケンまみれだからこそ至れる境地があることを。