短期間で転売する不動産投資家の存在

国交省がこのような政策を打ち出す背景にあるのが、新築マンションを購入して短期間で転売する不動産投資家の存在だ。

国交省が実施した調査によると、24年1〜12月に東京23区内で分譲された新築マンションのうち、販売から1年に以内に売却された物件は9.7%。都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)に限れば12.1%と、およそ8件に1件となる計算だ。

ちなみに、短期転売の比率は急上昇しており、23年通年では東京23区で5.7%、都心6区で7.1%にすぎなかった。

短期転売にかかる税金を引き上げることで、投資家を締め上げる――。こんな狙いが透けて見えるが、前出のA氏は「このタイミングで打ち出す政策としてセンスがない」と一笑に付する。

なぜか。最大の理由は市況の変化だ。

大規模緩和策によってマンション価格が年に10%、20%と上がっていた数年前ならともかく、日銀の利上げによって不動産市況が調整局面に入った現在において、「短期転売で3000万円以上の利益が見込まれる物件は、そうはない」(A氏)というから、遅きに失した感はある。

今回の措置が将来に向けて埋められた「地雷」に

むしろ、今回の措置は将来に向けて埋められた「地雷」となる可能性があるという。

短期売却といえば転売目的の投資家が真っ先に思い浮かぶが、不動産売買の現場で多いのはむしろ離婚や転勤、親の介護など、やむを得ない事情で物件を手放すケースだ。

いずれ不動産市況が反転した際、家庭や仕事の事情で自宅を売却しようとした人々が無情にも高額な税率を課される可能性がある。

離婚や転勤、親の介護など、やむを得ない事情で、短期間で物件を手放す人には、税率アップは大打撃となる
離婚や転勤、親の介護など、やむを得ない事情で、短期間で物件を手放す人には、税率アップは大打撃となる

市場が過熱していた時期に「注視」を続け、宴が終わったタイミングで余計な仕事をして国民を不幸にするという、いかにもな”お役所仕事”を感じさせるが、A氏は「むしろ業界として注視しているのは金融庁だ」と話す。

金融庁は15日に発表した金融行政方針で、超長期の住宅ローンについて「リスク管理が適切かどうか重点的に点検する」とした。

これに先立ち、片山さつき財務相は「借り手への説明や審査体制を注視していく」と発言。記者会見では変動金利の上昇を念頭に「毎月の返済額や総返済額がかなり増加することがあり得る」「利用者に金利リスクなどを適切に理解してもらわなければならない」と強い言葉を並べた。

全国紙の経済部記者であるB氏は「財務相がここまで踏み込んだのは、これ以上50年ローンを増やすなという金融機関へのメッセージだ」と解説する。