「脚本家変わった?」後半の展開に戸惑いも

第4話では、樹生が子供の頃に水族館で迷子になり、泣いていた自分を見た母親に嘲笑われたエピソードを明かす。これに咲子は「親にはなんで代わりがいないんでしょうね」「簡単にトレードできればよかった」と共感を示す。生方氏がこれまでの作品でも描いてきた、理不尽な親の言動を思わせる場面だ。

ところが、会話はそこから苦手な食べ物の話へと移っていく。

キュウリが苦手だという樹生に、咲子が「ほとんど水じゃないですか」と笑うと、樹生は「良くないですよ」と言い返す。今度は樹生が苦手なものを尋ね、咲子がトマトを挙げる。樹生が「ほとんど水じゃ…」と言いかけた瞬間、咲子は「違いますよ!」と食い気味に否定する。

深刻な家庭の話をしていた二人が、いつの間にか食べ物の好き嫌いで笑い合っている。こうした会話の移り変わりが、実に自然なのだ。

まるで日常のドキュメンタリーを見ているような会話劇に加え、樹生を演じる中島の「いや、その…」といった言い淀みも、妙なリアリティを生んでいる。登場人物の心の機微が物語の鍵となる本作では、こうした何気ないやり取りそのものが、大きな見どころになっている。

もう一つの魅力は、目まぐるしく予測不能な展開だ。ただし、それは同時に、本作への評価が分かれる要因にもなっている。

まず、事故で行方不明となった充が実は生きていたと判明するのが、最初の大きな驚きだ。しかも、生きているのに咲子のもとへは帰らない。その背景には、幼い頃からの“失踪癖”があったと明かされる。

さらに、不倫関係だと思われていた充とあずさも、実際には月に一度、コインランドリーで会って話をするという、ひと言では定義しにくい関係だったことが判明する。物語が進むたび、それまで信じていた人物像や関係性が次々とひっくり返されていく。

そして、充が帰宅した後半では、さらなる予想外の事実が明かされる。なんと咲子には4回もの離婚歴があったのだ。

井ノ原快彦が咲子の元夫としてサプライズ出演(画像/金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』公式SNSより)
井ノ原快彦が咲子の元夫としてサプライズ出演(画像/金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』公式SNSより)

こうした怒涛の展開に、SNSでは「脚本家変わった?」「急にコントみたいになった」「7話までとテイストが違いすぎる」といった戸惑いの声も上がるようになった。

予想を裏切る展開は、本来ドラマの大きな魅力だ。しかし本作の場合、前半で丁寧に描かれてきた人物のリアリティに惹かれていた視聴者ほど、後半になって次々と新しい設定が明かされることに違和感を覚えたのかもしれない。

何気ない言動から人物の感情を読み取る面白さと、物語の仕掛けによって驚かされる面白さ。その二つが本作には同居しているが、後半では後者の勢いが一気に増したようにも見える。

近年は、SNSなどでドラマを考察することが視聴の大きな楽しみになっている。昨年放送された『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)は「ノンストップ考察ミステリー」と銘打ち、作品側から“考察”を前面に押し出していた。