「本当のコストが誰にもわかっていない」
日経平均株価は2025年10月に史上最高値を記録し、2026年初頭にはさらに上昇した。だが、上昇相場はいつまでも続かない。後から振り返ったとき、「あの頃が天井だった」と語られる可能性は十分にある。
ここで過去の教訓を思い出してほしい。1990年代のバブル崩壊は、90年1月の株価の下落から始まったと言われているが、バブルの象徴として語られる「ジュリアナ東京」は、実は株価が下落を始めた後の91年5月にオープンしている。
つまり、当時の人々はバブルが崩壊し始めてもその事実を認識できていなかったのだ。人々は、株価が暴落し地価が下がり始めても、「一時的な調整だろう」と思っていた。バブルが本当に弾けたと気づくには、山一證券が破綻した97年まで待たなければならなかった。
リーマンショックのときも同様だ。2008年9月にリーマン・ブラザーズが破綻したというニュースが流れ、日本の株価がそれを本格的に織り込み始めるまでに半年近い時間がかかった。
タイタニック号は氷山に衝突した後も、船内ではしばらくの間パーティーが続いていた。船が傾き始めたとき、もう手遅れだった。バブルとはそういうものだ。今がその瞬間かどうか、私にも断言はできない。だが、いくつかの数字はすでにそれを示唆している。
価格の話だけではない。タワーマンションには、メディアがほとんど取り上げない構造的な問題がある。
一つは、修繕費の問題だ。マンションは古くなれば修繕費がかかる。これはすべてのマンションに共通する宿命だが、タワーマンションの場合はその規模と複雑さが桁違いだ。外壁の修繕一つとっても、低層マンションのように足場を組む方法が使えない。高所作業車が届く高さには限界があり、ゴンドラを屋上から吊り下げる方式になる。当然、コストは高い。
さらに深刻なのは、「本当のコストが誰にもわかっていない」という事実だ。タワーマンションが日本に本格的に普及し始めたのは2000年代以降だ。つまり、最初期に建てられたものがようやく大規模修繕の時期を迎えつつある。
設計段階での試算はあるが、実際に修繕を始めてみると、想定の2倍、3倍のコストがかかることが次々と明らかになっている。修繕積立金がいきなり3倍に跳ね上がった事例もある。












