「金持ち同士のキャッチボール」の正体

タワーマンションという言葉が、これほど日常的に使われるようになったのは、ここ十数年のことだ。駅前の再開発地や湾岸の埋め立て地に林立する高層建築は、成功の象徴として語られ、マスコミはその眺望の良さや豪華な共用施設をこぞって取り上げてきた。しかし私の目には、その風景が別のものに映っている。

そもそも「タワーマンション」は法律用語ではない。一般的には20階以上の高層マンションをそう呼ぶが、厳密な定義はない。私が仲介業者として関わるのは、もっぱら売買の場面だ。新築はデベロッパーが直接販売するため、仲介会社は関与しない。私のもとに相談が来るのは、一度誰かが買い、それを売ろうとしているケースである。

では、誰が買い、誰が売っているのか。

実需で買う層、つまり自分が住むためにタワーマンションを購入するのは、共働きで年収が高いパワーカップルが多い。二人とも上場企業に勤めている場合、世帯では相当な収入になる。銀行でも大きなローンが組めるだろう。だが、投資の観点で見ると、高額なタワーマンションを動かしているプレーヤーは、そういった「高収入サラリーマン」ではない。

タワーマンションを投資として買い回す層は、別次元の資産を持つ経営者や富裕層だ。彼らは複数の部屋を持ち、値上がりしたところで売り抜ける。SNS上では、富裕層コミュニティーの中で、どの物件の販売が始まるか、どの部屋が当たったかという情報が活発に交換されている。

いわば「金持ち同士のキャッチボール」だ。タワーマンションという高額商品を、富裕層が互いに売り買いすることで値段が釣り上がっていく。その輪の中に、実需に基づく価値の裏付けがあるわけではない。

私は以前、この「キャッチボール」の現場を自分の目で確かめたいと思い、タワーマンションの高層ラウンジで開かれた投資家向けのクリスマスパーティーに足を運んだことがある。私はもともと異業種交流会やパーティーが好きではない。それでも、こういう場に行ってみなければわからないことがある。

高層階で行なわれた社交パーティ ※写真はイメージです(写真/shutterstock)
高層階で行なわれた社交パーティ ※写真はイメージです(写真/shutterstock)
すべての画像を見る

43階のフロアから見える東京湾岸の夜景は、確かに息を呑む美しさだった。ただ、目を近くに向けると、ちょうど眼下に晴海フラッグのタワー棟が見える。明かりのついていない部屋が、驚くほど多かった。