なぜ「先輩の紹介」で来るのか

さらにCさんの場合、将来の住宅ローンへの影響も見落とせない。ワンルームマンション投資に5000万円のローンを抱えてしまうと、後でマイホームを取得したいと思ったときに借入枠が大きく削られる可能性がある。

本来8000万円借りられる人でも、5000万円のローンがあるために3000万円しか借りられない、といった事態があり得る。Cさんは「今のところ自宅の購入は考えていない」と言っていたが、30代のカップルが将来にわたって選択肢を狭めることの代償は小さくない。

「私なら150%買いません。誘ってきた紹介者には着信拒否でいいと思います」と私は言った。せっかく努力して築いてきた夫婦の収入と信用を、業者に食い潰されてはいけない。ワンルームマンション投資などに手を出している場合ではない。

「今日、話を聞いて、やめる方向で考えます」とCさんは答えた。

契約書にサインする一歩手前のところで、Cさんが相談に来てくれてよかった。その行動が、落とし穴に陥る前に踏みとどまるという幸運につながった。

3つの事例に共通するのが、「職場の先輩・知人の紹介」という経路だ。これは偶然ではない。私の感覚では、ワンルーム投資の購入者のほとんどが紹介経由だ。

高層マンション ※写真はイメージです(写真/PhotoAC)
高層マンション ※写真はイメージです(写真/PhotoAC)

ワンルームマンションの販売会社の営業マンは、入社すると最初に「リストアップ」をやらされる。自分の身内、友人、知人の名前を書き出し、片っ端から会いに行ってくるよう指示される。リストが尽きて売れなくなったら解雇、というのが、この業界の仕組みだ。先輩や友人が「いい話がある」と連絡してくるのは、あなたへの善意からではなく、自分のリストの中にあなたの名前があるからだ。

さらに、すでに物件を買ってしまった人は、「誰かを紹介すれば40~50万円の紹介料が入りますよ」と誘われる。業者は、毎月の赤字を少しでも埋めたい、という心理を利用する。友人に「儲かるから買ったほうがいい」と言う人は、自分が損していると気づきながら、紹介料欲しさに友人を売っている、ということでもある。

「先輩や友人が『儲かっている』と言うから、自分も」と、相談に来た人たちは口をそろえるが、「儲かっている」と言う人ほど怪しい。実際は損をしていても、自分の投資の失敗を知られたくないという体裁を取り繕うために、あるいは紹介料目当てであることを隠すために、「儲かっている」と言い続けることがある。

これがワンルーム投資の実態だ。被害者が、次の被害者を生み続ける仕組みができているのだ。