「買う直前で踏みとどまった」世帯年収1250万円・パワーカップル(女性)

Cさんが私のところに来たのは、まだ物件を買う前のことだった。

製薬会社のMRとして年収750万円、夫は公務員で年収500万円。世帯年収1250万円の、いわゆるパワーカップルだ。「節税になると聞いて不動産投資を検討していたんですが、滝島さんのYouTubeチャンネルを見て不安になって、一度意見を聞きたくて」と話した。

聞けば、夫の兄弟の知り合いで、「大学生の頃から趣味で不動産投資をしている人」が、物件を紹介してくれたという。提示されていたのは東京・平和島と神奈川の物件2戸で、そこに破格の条件が付いていた。

「7年間は赤字が出ても販売会社が全額補塡する。空室になっても自己負担は1割。10年後には残債で買い取り保証」。Cさんは「絶対に損したくない」という気持ちから、この条件に強く引かれた。ローンの審査はすでに通っており、販売会社からは契約手続きを急かされていた。ただし、契約書はまだ受け取っていなかった。

住宅ローン(写真/PhotoAC)※画像はイメージです
住宅ローン(写真/PhotoAC)※画像はイメージです
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試算してみると、平和島の物件だけで毎月約2万円、年間24万円の赤字が出る。「その赤字を7年間、販売会社が負担する」というのが提案の核心だ。だが調べてみると、その会社は設立3年目で、ホームページもフリー素材で作られたような出来だった。

そんな会社が、なぜ他人のために年間24万円、7年間で168万円もの赤字を引き受けるのか、合理的な説明がつかない。仮に会社が存続している間は約束が守られたとしても、会社が潰れた瞬間、保証はなくなる。残るのは赤字を垂れ流す物件だけだ。

「節税になる」というのも、冷静に計算すれば疑わしい。ワンルーム投資の節税効果は減価償却を利用したものだ。建物の価値が年々目減りするとみなして、その分を損失として計上することで課税所得を減らすわけだが、これは実態として「損をしたから税金が還付される」にすぎない。

この物件の場合、年間24万円の赤字が実際に出るが、その損失によって年間31万円程度の税金が戻ってくる計算になる。確かに差し引きでは年間7~8万円のプラスだ。

しかしそれは、24万円の損失を出してようやく得られる7~8万円なのだ。しかも、収益性の低い物件は時間が経つほど資産価値が下がっていく。帳簿の上でわずかにプラスになっている間に、物件そのものの価値が目減りし続けるのだ。これを節税と言って喜ぶのは本末転倒だ。