信者以外の女性と結婚して、家族と断絶

そんな石崎さんの人生を大きく変える出来事が起きたのは38歳のときだった。行きつけのバーで知り合った女性と意気投合し、結婚したのだ。

「妻は大陸系の中国人で2歳上です。物事をはっきりとズバズバ言う人なんですよ。ずっと両親や同僚の顔色ばかり見て動いていたから、本音と建て前を使い分ける人が苦手だったんです。

だけど、妻は最初から本音でぶつかってきてくれたので、安心感がありましたね。

結婚して守る存在ができたのが大きかったし、逆に妻も私を守ってくれる。家に帰ると『ニャア♡』つって、こっちはもう甘えるだけ。ハハハハハ」

一方で、この結婚によって失ったものもあった。石崎さんの両親や弟、祖父母は皆、同じ宗教を信仰している。石崎さんは、家庭内で「信者ではない人とは結婚できない」と教えられてきたという。

「結婚するなら宗教は外れなきゃね。もう連絡できないよ」

家族からそう告げられ、石崎さんは実家と断絶することになった。

写真はイメージです(写真/Adobe Stock)
写真はイメージです(写真/Adobe Stock)

その時点で石崎さんの宗教に対する気持ちは既に揺らいでいた。熱海に失踪する前、神様に必死に祈ったのに状況は変わらず、同じ宗教の信者から助けてもらうこともなかったから、信仰への気持ちは半分ほど離れていたという。

そのため、家族との断絶はつらかったものの、宗教を離れること自体には迷いはなかった。

宗教から離れたことで、仕事やお金に対する考え方も変わった。それまでは「好きなことができればいい」と、収入にはあまり頓着せず、フリーランスと会社員を行き来していた。

高いITスキルを持ちながら、新卒社員並みの給与で働いていた時期もあったという。そこには、子どものころから教え込まれてきた宗教の価値観が影響していた。

「神様のために頑張っていれば死んだ後に救済されるから、仕事で成功するとか、お金をたくさん稼ぐ必要はない」と教えられていたのだ。

しかし結婚して、妻との生活を守らなければならなくなると、初めて現実的な将来設計を考えるようになった。

そこで、自分の技術に見合った収入を得られる会社へ就職。プログラミングを教える講師として、新人研修や技術研修などを担当し、8年間働いた。

高いITスキルを発揮できる場所を求めた石崎智展さん(写真/集英社オンライン)
高いITスキルを発揮できる場所を求めた石崎智展さん(写真/集英社オンライン)

「パワハラを受けたりして、ちょこちょこうつになることはありました。でも、以前ほど深刻にはならずに済みました。

自分の努力を認めて、守ってくれる妻がいることが大きいですね。『ここで倒れちゃダメだ』と思って、ちゃんと病院にも行くようになりました」