デジタルタトゥーがその後の人生に落とす暗い影

斉藤 教員グループが盗撮動画などをSNSで共有していた事件では、女子児童の写真を使った性的ディープフェイクを所持していたとして、元教員が児童買春・児童ポルノ禁止法違反(所持)で追起訴されていますね。これは全国初のことだとか。

永守 2026年6月の裁判では、この教員には懲役3年6か月の判決が下されています。「一般人から見れば裸を誤信させる精巧なものできわめて卑劣」と裁判官が非難し、AIが性的に加工した写真も児童ポルノの所持と認定されました*1。一時はAIが加工した画像を「実在」と認めるかどうか、法解釈が難しいといわれていましたが、画期的な司法判断だと思います。

私は法律の専門家ではありませんが、被害の深刻さを考えると、やはり「同意の有無」を基準にした法整備、そして国境を越えた国際的な捜査協力が不可欠だと痛感しています。

斉藤 永守さんは、デジタル性暴力の被害に遭った未成年の方の声を直接聞くことも多いのでしょうか?

永守 そうですね、これまで何人もの被害者を目の当たりにしてきました。学校内で盗撮などの被害に遭った場合、不登校になってしまう生徒は少なくありません。

同じクラスや学年に加害者がいる場合、被害者にとって学校に行くのは、かなりの精神的負担です。さらに、被害に遭ってから数年が経過しても、「今この瞬間も、ネット上には自分の性的な画像が拡散されているのではないか」と強い不安に苛まれ続ける子は多いですね。

写真はイメージです
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斉藤 デジタルタトゥーが、進学や就職などその後の人生に暗い影を落としてしまうわけですね。

永守 加害者による撮影は一瞬ですが、被害者は画像や動画が消えない恐怖と長期間、あるいは一生涯、向き合い続けなくてはならない。この非対称性は、あまりに残酷です。

斉藤 私立校であれば転校や退学といった柔軟な措置も可能ですが、公立校ではなかなか難しい。教育行政の専門家などの意見を取り入れながら、体系的なルールを早急に整備することは喫緊の課題といえるでしょう。

写真/shutterstock

*1「隠しカメラ探知機、レンズふさぐシールも進む教職員スマホ盗撮対策」朝日新聞2026年4月13日https://www.asahi.com/articles/ASV482SPTV48OXIE00KM.html

後編〈「クラスメイトを盗撮したら500円」〉子どもを性加害者にする“大人の誘惑”…お小遣い稼ぎからハマる「デジタル性暴力」の引力 に続く

校内盗撮 (インターナショナル新書)
斉藤 章佳
校内盗撮 (インターナショナル新書)
2026/8/7
1111円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4797681772
スマホ1台で、子どもが被害者にも加害者にもなる――。
今、学校で急増する盗撮。教員が児童・生徒をターゲットにするだけでなく、子ども同士の事例も相次ぐ。
「校内盗撮」という性暴力から子どもを守る方法とは? 保護者・学校関係者、必読の書!

2025年、名古屋市の小学校教諭の逮捕がきっかけで発覚した教員グループによる盗撮事件。
教員らが学校で児童・生徒を盗撮し、その画像をSNSのグループチャット内で共有していたことが報じられ、世間に大きな衝撃を与えた。
この他にも近年、学校での盗撮をめぐるニュースは後を絶たず、実際に盗撮被害は急激に増えている。
ただし、スマホやSNSが当たり前になったこの時代、教員が加害するばかりでなく、子ども同士の盗撮も目立つ。
さらに、日進月歩の生成AIを悪用した性的ディープフェイクもはびこり、事態はますます複雑化・深刻化しているのだ。
なぜ、学校という空間で盗撮が相次ぐのか。そして、大切な子どもたちを守りたい保護者、教育現場、社会は、こうした状況に対してどのように手を打つべきなのか――。
「校内盗撮」という深刻な性暴力の現実と、子どもを被害者にも加害者にもさせないための対策・予防法を、3500人以上の性犯罪者の治療プログラムに携わってきた著者が豊富な臨床経験をもとに解説する。

【特別対談も収録】
・盗撮事件を起こした有名中学受験塾元講師A
・永守すみれ (ネットパトロール団体「ひいらぎネット」代表)
・末冨芳 (教育行政学者、日本大学文理学部教育学科教授)
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