透析室から、戦争反対を訴える

ロイターの記事が出た翌日、3月28日に僕はニューシングルを発表した。タイトルは『病院を攻撃するな!』だ。これは昨年、ガザの病院をイスラエル軍が攻撃するというショッキングなニュースを見て書いた曲なのだが、今や戦争という行為そのものが病院への、病人への攻撃になるという構造をカバーする歌になってしまった。

僕は病院を地元(フッド)、病人をジモティー(ホーミー)と捉え、病気(イル)をレペゼンするラッパーだ。『病院を攻撃するな!』は僕の地元を攻撃するな!という思いをストレートに歌った曲になった。ちなみに曲中では、透析患者へのあまりに酷い態度で悪い意味で話題になった人物を名指しで批判しているので、ぜひ聴いてほしい。

4月3日。TBSラジオ『荻上チキ・Session』から出演オファーがあった。金曜日だったので、出演時間は透析中とかぶる。だが、今起きているナフサ不足が透析患者にどう影響し得るかは、話さないといけないとも思った。

僕はクリニックにお願いして個室を借りて、そこからリモートでラジオ出演をすることにした。透析回路が繋がった状態でiPadからZoomでTBSのスタジオと繋いでもらう。スタジオでは荻上チキさん、片桐千晶さんが笑顔で迎えてくれた。

30分弱の出演時間で、透析という治療が何をしているか、いかにナフサに囲まれているかを話した。話している途中で血圧が上がっていたようで血圧の警報が鳴り出してしまったが、止め方がわからず、放送中も度々ピコーンという音が混じってしまったが、要点は伝えることができたと思う。『病院を攻撃するな!』も紹介することができた。

チキさんは、ちゃんと確認はしていないけれど、多分ラジオに生出演した初の透析治療中のラッパーだと思いますと言っていた。確かに田端駅前クリニックのような方針でなければ、ラジオ出演は難しいだろう。かくして僕は、透析中のラジオ出演という新たな地平を開きながら、透析患者の苦境の可能性を訴えることになったのだ。

高市首相は、ナフサ不足への対応はできていて、日本国として必要な十分な量の石油は確保できていると言っている。国内備蓄と代替ルートを使って調達しているという。だが、ナフサの原料の石油が不足しているのは日本だけではない。各国ともに調達に動いている。

そして透析患者にとっては、週3回の治療を続けることがそのまま生命維持の条件でもある。これを書いている2026年4月末時点で、いまだに停戦は実現していないし、先行きは不透明だ。僕をはじめとした世界中の透析患者が、ピットインを続けながらも走り続けるためにも!病院を攻撃するな!戦争反対!

文/ダースレイダー

『セルフ透析はじめました』(KADOKAWA)
ダースレイダー
『セルフ透析はじめました』(KADOKAWA)
2026年8月20日
2090円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4046080189
「受ける」治療から「自ら行う」治療へ。近年注目!セルフ透析のすべて

脳梗塞、糖尿病、腎不全、片目の失明etc.常に病と共に生きてきたラッパーが綴る。
近年話題、「セルフ透析」の記録をまとめたノンフィクション!

2025年9月、週3回・1回4時間の人工透析生活が始まったラッパー・ダースレイダー。
多くの人が「失われる時間」と捉える透析の4時間を、彼は「思考し、創造するためのスタジオ」へと変えていく。
その転機となったのが、自ら治療に主体的に関わる「セルフ透析」という選択だった。

本書は単なる闘病記ではない。
透析導入を先延ばしにしてきた葛藤、初めて「病人」になった実感、セルフ透析の習得に悪戦苦闘する日々、
出張透析でライブを続ける挑戦、そして家族との食卓や仕事との両立まで、リアルな日常を率直に綴るドキュメントである。
医師や看護師、長期透析患者らとの対話を通して、透析医療の現状や可能性も、ラッパーらしいカジュアルな筆致で伝える。

また、セルフ透析の第一人者・櫻堂 渉氏、田端透析クリニック院長・小杉氏、
ダース氏の先輩であり透析歴15年を超えるグレート義太夫氏など、有識者との対談も収録。

人生のモードを「アウトドア」から「インドア」へ。
制約を受け入れるのではなく、制約をハックして新しい自由をつくる―。
本書は、透析患者や家族だけでなく、病気や障害、仕事や介護など、
さまざまな「不自由」とともに生きるすべての人への、新しいライフスタイルを提唱する一冊である。
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