ナフサ不足で、透析患者は戦争の当事者になった

開戦から1ヶ月経った3月27日、ロイター通信は次のような記事を発表する。

『ナフサ不足で医療機器が出荷困難の可能性、透析・手術用の品目4-8月にかけて』東京発の記事で、中東情勢悪化に伴い石油製品であるナフサの供給不足が深刻化した場合、緊急性の高い医療器具が品目によっては供給不足になるという内容で、かなり拡散されたと思う。

ナフサという言葉自体、僕は今回初めて知った。ナフサは石油を精製する際に抽出される物質で、プラスチック・合成ゴム・塗料など、あらゆる石油化学製品の原料だ。透析で使う回路はタイやベトナムの工場で生産されているが、そこへのナフサ供給が途絶えた場合は、4〜8月ごろから国内への出荷が困難になる可能性があるのだ。

透析用の器具は他にも注射針やダイアライザーなどもナフサで作られているし、透析に限らなければ、点滴用のバッグや医療用手袋やガウンに至るまで、医療器具は衛生面を考えた使い捨ての製品が多い。こうした器具はほぼナフサでできているのだ。

透析に使う回路を組み立てるセッティング作業
透析に使う回路を組み立てるセッティング作業
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つまり中東で起こった戦争の影響は、今や世界中の透析患者に及んでしまっているわけだ。僕はまさに戦争の当事者になってしまったというわけだ。

調べていくと、驚くべき事実にさらに気づいてしまう。石油と聞くと燃料を思い浮かべがちだが、ナフサ製品は燃料にとどまらず、今の人類の社会はもはやプラスチックやゴムなしでは回らないものになってしまっているのだ。

生活のあらゆる部分に石油化学製品は浸透している。僕は元々気候変動には強い関心があり、世界の動向を追っていた。そのテーマでもあまり希望のある見通しはないのだが、再生可能エネルギーの技術の進歩と低価格化の勢いはものすごく、化石燃料からの転換もあり得ると考えていた。

だが、石油は燃料だけではなく、むしろ近代生活を支える基盤そのものだったわけだ。その意味では気候変動対策を進めながらもある程度のバランスを保たないと、人類の生活そのものが維持できなくなる。

人類にはいよいよ難しい舵取りが迫られているわけだが、これだけ中東依存の石油が世界中を繋いでいるという事実は、人類にもう一つの大きな教えを説くことになる。人類はもう戦争などしている場合ではないということだ。

国際秩序はそれだけ相互に依存する経済、文化体制を作り上げていて、どこかの国が自国の利益だけ見て行動しても、全体が直ちに影響を受けてしまうのだ。