「犬は家族の一員」食文化を変えた韓国社会の意識

法制定の結果、業界は消滅への道をたどっている。今年5月の韓国農林畜産食品部の発表によれば、2024年8月に1537カ所あった犬飼育農家は272カ所に減少した。

消えゆく犬食を市民はどうみているのだろう。

「私は一度も食べたことがなく、食べること自体が理解できませんでした」という50代の会社員女性Aさんは、自分の好き嫌いとは別に社会の変化を説明してくれた。

「以前は犬肉を滋養食として食べていても、犬を飼うようになって考えが変わり食べなくなった、という知人を多く見てきました。外国の文化の影響というより“家族の一員”という認識が社会で広がって、犬肉食に反対する空気が強まったと思います。

韓国では、ペットを飼う人も増え続けていて、食用反対を越えて“動物の権利”の問題への関心も高まっています。動物の権利を強く認識する欧米の水準に追いついていくのではないでしょうか」(Aさん)

犬肉食反対を訴える政治団体「ワンニャン平和党」の設立会見で上映された、食用として処分される犬の映像(撮影/集英社オンライン)
犬肉食反対を訴える政治団体「ワンニャン平和党」の設立会見で上映された、食用として処分される犬の映像(撮影/集英社オンライン)

韓国農林畜産食品部が2025年に全国3000世帯を対象に行なった調査では、ペットを飼う世帯は全体の29.2%となった。しかもこのペットがいる世帯のうち犬を飼っているのは80.5%に達し、第2位の猫の14.4%に大差をつけている。

韓国の世論調査機関ギャラップの調査では、ペットを飼う人の割合が2015年の19%から2022年には30%へ増えた一方、犬肉を1年の間に食べた人は15年の27%が22年には8%に減った。犬肉食を否定的に見る人も64%に達しており、ペットの家族化と並行して犬肉食への意識が変化してきたことがうかがえる。

ペットの家族化が進む韓国(写真/shutterstock)
ペットの家族化が進む韓国(写真/shutterstock)
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しかし、韓国ではただ食文化が一つ消えるわけでもないようだ。

「犬に代わってヤギが“受難”すると言われていて、実際に街中ではヤギ肉の店が増えています」(Aさん)

実際、犬肉に代わる滋養食として黒ヤギ料理の需要が伸びている。韓国では国内のヤギ肉消費量が2021年の約6600トンから2024年には約1万3000トンへ増加した。

犬肉が消えても、“夏に滋養食を食べる”という習慣まではなくならないようだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班