「伝統の食文化」から「新たなペット文化」へ…

韓国では今夏、記録的な猛暑が続いている。8月2日には南東部で42.5℃という高温を記録。日本の観測史上最高気温を上回る暑さに、熱中症による死者も相次いでいる。そんな韓国では毎年、日本でウナギを食べる風習のある「土用の丑の日」のように“滋養食を食べよう”という日がある。

「中国の古い思想をもとに初伏(チョボク)、中伏(チュンボク)、末伏(マルボク)という3日があり、毎年少しずつ日付は変わるのですが、今年は7月15日、25日、8月14日がそれぞれあたります。

これらの日には日本人にも人気の参鶏湯(サムゲタン)が多く食べられますが、同じく有名なのが、補⾝湯(ポシンタン)と呼ばれる犬肉のスープです。毛が短い食用犬の肉を、香りの強い野菜と一緒に煮込んだもので、クセが強くて好き嫌いは分かれるでしょうね」(食べた経験がある元ソウル駐在員)

補⾝湯(ポシンタン)(写真/Wikimedia Commons)
補⾝湯(ポシンタン)(写真/Wikimedia Commons)
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ソウル旧市街にはかつて、食用犬がずらりと並ぶ市場もあった。夏の補⾝湯店には行列ができるほど。犬肉はよく食べられてきた。

しかし、1988年のソウルオリンピックを機に海外の動物保護団体から批判の声が上がり、それから国内でも禁止を求める声が高まっていった。

歴代政権も何度か食用禁止を検討したが、関連業界や犬肉ファンからの「伝統の食文化をなくしていいのか」との抵抗に遭い、挫折してきた。しかしここ数年で事態は一気に進んだ。禁止を決定づけたのは、日本でも有名な“アノ人”の行動だったという。

「2024年12月に戒厳令を宣布し、政治学上“セルフクーデター”とも評される行動に失敗し失脚、逮捕された尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻・金建希(キム・ゴンヒ)氏です。ブランドもののバッグを賄賂として受け取ったなどとして逮捕、起訴されている金氏は夫を尻に敷き、政治にかなり口出しをしていたと言われています。

その一つが、当時の与党『国民の力』が法案を提出し、2024年1月に成立した『犬食終息法』です。犬好きな金氏は犬肉食の禁止をたびたび訴えてきたので、“金建希法”と呼ばれています」(韓国メディア記者)

韓国の尹錫悦前大統領の妻・金建希氏(写真/韓国MBCテレビ公式YouTubeより)
韓国の尹錫悦前大統領の妻・金建希氏(写真/韓国MBCテレビ公式YouTubeより)

同法は、食用目的の犬の飼育や流通、販売を全面禁止。廃業に追い込まれる犬飼育農家や補⾝湯店を政府が支援する内容が盛りこまれ、施行まで3年間の猶予期間を設けた。そのため、来年2月からは食用目的の犬の飼育・食肉処理や、犬肉の流通・販売が禁止される。