愛の物語、愛のある撮影現場
──五巻まで読んで、小説とドラマとの違いをどうお考えですか。
小説を忠実に再現しようとしたら、大河ドラマ以上のボリュームが必要ですよね。でも、時間の制約があるからこそ、どのエピソードを選んで、どう映像化したかを原作と見比べる楽しみがあると思います。
僕たち役者の仕事も、原作で書かれているバックボーンを理解したうえで、それを限られた登場シーンで表現することなんです。
──現場の雰囲気がとてもよかったとおっしゃっていましたが、あらためてふり返ってどうでしたか。
スタッフワークがすばらしかった。整いすぎている環境だったというのが本音で、愛すべき現場でした。
現場に入る前は、演技をする環境はどうなんだろうとか、自分が期待に応えられるだろうかとか、いろんな不安があるんですけど、いざ、その場所に立ってみると、ちゃんと必要なものが十分に用意されているから、最高の舞台になっていました。「よし、やったるかー!」という気持ちで芝居に臨めましたね。
若松監督は「いいよ、達」「達、いいよ」って何度も言ってくださって──たぶん、みなさんに言ってると思いますけど(笑)──そのうえ、すごくいいお言葉をいただいたんです。
「なぜ今、みんなが時間をかけて準備しているかわかるか? お前がいい芝居をしているからだよ。もっとやれ。お前をもっとよく見せようとしてみんな頑張っているんだから」と。
朝から晩まで重い棒を思い切り振り回して、タトゥーが剥げていないかを何度もチェックして神経を使う中で、あの言葉にどれだけ救われたことか。
──いいお話ですね。五巻まで読み終えて、改めて小説『水滸伝』をどう捉えていますか?
一言で言うと“熱い”。そして面白い。これは人気が出るのは当然ですね。一冊四百ページ近くあっても、読み始めると引き込まれて時間を忘れます。登場人物は多いですが、一人一人がそれぞれ違う心を持って生きていることがちゃんと伝わってきます。
梁山泊と青蓮寺。対立する二つの集団の、どちらかが正義で、どちらかが悪というわけではない。おのおのの正義がぶつかり合うから面白いんだと思います。
──俳優として登場人物の一人を演じながら原作小説を読むという経験はどうでしたか。
やっぱり史進が何をするかが気になりました。しばらく出てこないと、いまどうしているだろうと思ったり。
ドラマの撮影をしながら読んだというのもいい経験でしたけど、若い頃に読まなくてよかったとも思いました。史進ぐらいの十代、二十代前半に読んでいたら、たぶん書かれていることの意味が今ほど理解できなかった。この歳になって、しかもドラマの撮影を経験して読めたのは本当にありがたかったです。
ここまで読んできて思ったのは、北方先生の『水滸伝』が、愛の物語だということ。登場人物たちがみな、愛する者のために戦う。死ぬとしても、愛する者に思いを託す。いい時代になってほしいという願いをバトンのようにつないでいく。ドラマの撮影現場にもそういう愛がありましたね。本当に愛すべき現場でした。
木村達成、北方謙三『水滸伝』を読む。は今回で最終回です。ありがとうございました。
聞き手・構成/タカザワケンジ
写真/矢吹健巳〈W〉 スタイリング/部坂尚吾(江東衣裳)
ヘアメイク/齊藤沙織 聞き手・構成/タカザワケンジ
北方謙三「大水滸伝」シリーズ公式サイト
https://lp.shueisha.co.jp/dai-suiko/














