“漢”たちの死と、託されたもの

──そして五巻のクライマックス、楊志(ようし)が亡くなってしまう場面についてはどうでしたか?

馬桂(ばけい)が犬の白嵐(びゃくらん)を使って、楊令(ようれい)を探させ楊志の居場所を突き止めるやり方、あれは本当に卑劣ですよね。楊令がそのことを後から知ったら、めちゃくちゃ心の傷になるなと思って心配になりました。

でも、楊志の最後の戦いっぷりはかっこよすぎます。

 ふり返る。楊令。済仁美(さいじんび)に庇われるようにしながら、顔だけこちらにむけていた。眼が合った。笑いかけようと思った。笑えたかどうかは、よくわからない。父を見ておけ。その眼に、刻みつけておけ。
 地を這うように、斬撃が来た。かわしもせず、楊志はその男を頭蓋から両断した。
(北方謙三『水滸伝』第五巻「玄武の章」集英社文庫 p294)

ドラマ版の主題歌、MISIAさんが歌う「夜を渡る鳥」が流れてくるんじゃないかって思いましたね。映像が脳裏に浮かびました。

駆けつけた石秀が楊志の死を確認するところもいいんですよ。

 楊志のそばに、石秀は駈け寄った。眼は見開いていた。しかしもう、生の色はなかった。
 楊志に、なにが起きたのか。信じたくなかった。すべてがわかっていても、信じたくなかった。涙だけが、溢れ出してきた。空を仰ぎ、石秀は何度も、くり返し叫んだ。
「隊長」
(北方謙三『水滸伝』第五巻「玄武の章」集英社文庫 p297)

石秀が楊令に致死軍の剣を渡すところも熱かった。あの瞬間もまさに「託す」場面。石秀は楊令が、楊志が遺した吹毛剣(すいもうけん)を使えるようになるまで、俺が使っていた剣を使え、と言っています。

──楊令という存在が、五巻でぐっと大きくなってきましたね。

楊令は多分とんでもない人間になりますよ。石秀が稽古をつけて剣を振り降ろしたときも、楊令はまばたきさえしない。公孫勝(こうそんしょう)みたいなクールな軍人になるのかな。それともいろいろな経験をしてまた変わっていくのかな。この先、いろんな“漢”たちの思いを受け取っていくと思うと、将来が楽しみですね。

俳優の木村達成さん 写真/矢吹健巳〈W〉
俳優の木村達成さん 写真/矢吹健巳〈W〉