マルクスの「レント資本主義」

──「資本主義はすでに死んでいる」と論じたヤニス・バルファキスの『テクノ封建制』(集英社)を引きながら、「いや、実際にはまだまだ資本主義だ」と批判しているくだりも読み応えがありました。

今のテック企業の儲け方は、例えばUberのプラットフォーム上でドライバーと乗客のマッチングをしてやるから、売り上げから2割を払え、というようなものです。Uber自体は運転をしませんが、マッチングの場を独占することで、「ショバ代」をかすめ取るビジネスが広まっています。バルファキスは、ユーザーである「クラウド農奴」からデジタル空間上の地代(レント)を徴収するようなビジネスがメインになった経済を「資本主義ではなく封建制だ」と主張しました。

しかし、これは普通におかしい。封建制は技術的革新もなく、貴族が土地を独占して伝統に基づいて農民から搾取する牧歌的な社会です。一方、現実のGAFAMはデータセンターに莫大な投資をし、技術革新にしのぎを削っています。新しいフロンティアを切り開き、労働者を資本のために使い尽くすという原理自体は全く変わっていません。

バルファキスが言うようにレントが支配的になっているのは事実です。しかし、実はマルクスも『資本論』の3巻の最後で、資本主義的なレントを分析しています。希少な資源を資本が独占し、アクセスフィーなどを徴収していく経済のあり方をマルクスもレントと呼んでいる。それに倣えば、プラットフォームが私たちの知識や作品を独占して囲い込み、レントを払わせるビジネスは「レント資本主義」と呼ぶべきです。

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──マルクスはお見通しだったと?

そう読めます。マルクスは資本主義の発展を「産業資本→商業資本→金融資本→レント資本」の順で叙述しました。すなわち、資本主義が実体経済でのフロンティアを開拓できず、独占して地代を払わせるレント資本主義は、資本蓄積が行き詰まった際に行き着く、資本主義の「最終的な姿」であることを意味しています。レント資本主義の中心であるアメリカを見れば、そのことは明らかです。

現在、S&P500のうちマグニフィセント・セブンと呼ばれるハイテク大手の7社だけが好調で、他の493社は停滞しています。富が一極集中するスーパー格差社会を食い止めなければ、彼らが思考や行動まで操る社会になってしまいます。