「暗黒啓蒙」への対抗
──今のアメリカ政府とテック企業が癒着して進んでいく先には、終末ファシズムが待ち受けていると指摘されています。
世界はすでにこの「フェイズⅡ」に向けて動き出しています。トランプや、彼を支持するイーロン・マスク、ピーター・ティールといったテック業界の大富豪たちは、すでに気候崩壊の危機を見据え、自分たちだけが生き残るための適応策をハイスピードで進めています。
これまでの30年間は、グローバル化を進め、新しいフロンティアを開拓して経済を成長させ、それに合わせて資本主義を広げていくという時代でした。そこには建前上ではあれ、成長が無限に続き、未来はますます良くなっていくという世界観がありました。しかし、その建前の世界観すら終わったのが現在です。地球環境は劣化し、資源制約が強まっています。土地や水など、新しい地球環境に適応するために必要な資源を、人間は人工的に作れません。
その限られた環境の中で、「いかに自分たちの快適な生活を露骨に守るか」という時代が、彼らの見据える「フェイズⅡ」の世界です。アメリカはテック企業も含めて、世界の秩序を大きく変えようとしています。「みんなが無理なら、俺たちだけにしようぜ」というのが選民的な終末論であり、それが切り捨てや分断を深めていきます。
私たちはまずそこに向けて認識をアップデートし、どう抗っていくのかを考えなければならない地点に来ています。それをやらなければ、選民ファシズムになってしまう。
「フェイズⅡ」は確かに受け入れなければなりません。未来は暗く、もはや安定的な成長は見込めません。これは近代の啓蒙思想からの大きな転換です。しかし、それが必ずしも一部の人間だけが生き残る選民的な終末になる必要はありません。現在、哲学者のニック・ランドやカーティス・ヤーヴィンなど、テック系の選民思想家たちが提唱しているのは「暗黒啓蒙」ですが、私が目指すのは、人命の生存を最優先する「暗黒社会主義」です。
──ピーター・ティールたちの黙示録的な認識自体は正しいと?
ええ、ティールたちはアメリカのリベラルや民主党よりも現実をしっかり認識している部分があります。資本主義の進歩が終わり、有限な地球での無限の成長の余地はなくなりつつあるという認識自体は正しい。ただ、「だから俺たちで全部、囲ってしまおうぜ」という結論には絶対に同意できません。
しかし同時に、この暗黒さを根本に据えない限り、正しい解決策を導き出すことはできないのも確かです。「資本主義を倫理的にすれば、まだ成長できるし豊かになれる」という哲学者マルクス・ガブリエル的な処方箋は、希望を与える一時的な鎮痛剤としては有効かもしれませんが、現実の否認であり、欺瞞でしかない。成長も民主主義も可能だと言いながら、都合がいい時はロシアを非難しつつ、ガザは見捨て、アメリカにくっついていくヨーロッパのやり方では選民ファシズムを避けることはできない。
だからこそ、「暗黒社会主義」という、ぎょっとするような暗い言葉をあえて使いながら、ある種のニヒリズムではなく、現実を認識することで初めて見えてくるものを突き詰めて考えたのです。













