「加熱中の鍋の汁で熱消毒は……」

東京都健康安全研究センターの担当者はこう解説する。

「加熱している鍋の汁に菜箸を入れることが熱消毒の役割を果たすという認識は全くありません。生肉には基本的に食中毒リスクがある細菌やウイルスが付着しています。ですので、基本的には菜箸もそうですし、まな板などの調理器具も生肉用とほかの食材用で分けてほしいというのが我々の立場です」

加熱中の鍋の汁では熱消毒ができているとは言えないと語る担当者に、食中毒リスクを減らすための具体的な方法をきいてみた。

「鍋は菜箸を分けてください。生肉を扱った菜箸は、後片付けのとき基本的には洗剤と水で洗ってもらって構いません。さらに洗剤を流した後に熱湯をかけると、最も消毒効果があると言えます」

さらに、肉の種類によって食中毒リスクに差があるのかを尋ねたところ、世間の誤った認識についてこう警鐘を鳴らした。

「どのお肉が安全で、どのお肉が危ないということはないです。『牛肉は多少赤くても大丈夫』『豚肉は十分火を通す必要がある』みたいなことを言われる方が多くいますが、基本的にどのお肉にも食中毒になる恐れのあるウイルスや細菌が付着しています」

では、肉を食べるにあたって食中毒のリスクを抑えるためにはどうすればよいのだろうか。担当者はこう続ける。

「肉自体の加熱においては、厚生労働省が『75℃以上で1分間相当』加熱するという指針を示しています。しかし、それが広く周知されているかというと、そうではないのが現状です。十分に加熱をして食べてほしいと思います」

生肉調理の指針(厚労省ホームページより)
生肉調理の指針(厚労省ホームページより)
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年末年始、家族や友人と鍋を囲む機会も多くなる。面倒でも、肉を取る菜箸とお皿に取り分ける菜箸は別にし、お肉自体も十分加熱したほうが良さそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部