放置台数は減っているが……。地元区議は「盗まれたのでは」
車は見るも無惨に焼け焦げ、地面には燃えカスのようなものが広がっている。
割れたフロントガラス部分には、炎上後に捨てられたと思しきビニール傘の残骸も確認できた。前述の男性の証言どおり、車両を撤去しないことで、この場所がゴミ捨て場と化していることがよくわかる。
近隣で働く人々を悩ませている放置車両問題。しかし、行政の対応はなぜ後手に回っているのか。長年この問題に取り組んできた江東区議会議員・高野はやと氏に話を聞いた。
「すでに10年ほど前から放置が始まっていたようですが、江東区が事態を把握したのは昨年末です。所管の東京湾岸警察署も12月15日から道路を駐車禁止エリアに指定し、年明けからは取り締まりを強化。持ち主の確認などの作業も進めています。
長らく見過ごされていた最大の要因は、新木場には人がほとんど住んでおらず、『(近隣)住民の目』がないということです。それに加えて、もとは駐車規制エリアではなかったため、駐車中か放置車両か判断がつきづらかったのではないでしょうか」(高野はやと氏・以下同)
高野氏によれば、今年初めには約50台あった放置車両が、4月3日午前の視察時には19台程度まで減少。一定の改善が見られるものの、「これは行政による成果ではない」と指摘する。
「区の説明では、報道が増えて以降、持ち主が名乗り出て車を引き取り始めたとのことでしたが、私の推察ですと、部品の転売目的で盗まれた車も中にはあるのではないかと。
実際に残っている19台は、損傷が激しく、金銭的価値のなさそうなものばかり。こうした車両は誰にも引き取られず、今後もそのまま放置され続けるのではないでしょうか」
気になる今後について、高野氏は「税金を使って放置車両を処分する可能性が極めて高い」と語る。
「まずは持ち主を特定するのですが、見つからないものに関しては、行政側で処分することになります。この際、金銭化できるものは売却し、それ以外は業者に引き取ってもらう、という決まりがあります。ただ、残っている車両は金銭的価値のなさそうなものばかり。最終的には、区の税金で処分することになると思います」
この問題は議会でも取り上げられており、3月の江東区議会では、高野氏を含む2名がこの件について質問を行なったそうだ。次回の議会でも、再発防止策などが議論される見通しだという。
夢の島は、かつてゴミの埋立地として使われていたエリア。その役目を終えた今は、放置車両問題が近隣住民や働く人々の頭を悩ませているようだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班