2000試合出場者がいない唯一のポジション

僕がプロに入って試合に出始めた頃、守備はめちゃくちゃ下手だったと思います。実際にプロ3年目の2006年は21失策。当時は、捕ることと、投げることの両方に不安がありました。

それがなくなったのは、レギュラーになって3年ほど経った時です。体の使い方がわかってきて、“捕る”“投げる”というプレーを別々の動きではなく、“一連の動作”としてとらえられるようになった瞬間がありました。

そこからは、状況に応じて自分の中で微調整をしながら経験を積み重ね、いろいろな不安材料を消していった感じです。無理のない動きができるようになってくると、シーズン途中に疲れて動きが悪くなるということもなくなっていきました。

現役を引退してから、プロ野球中継の解説などで、グラウンドを俯瞰する機会が増えましたが、見れば見るほどショートというポジションは、難しくて大変だということを感じています。

グラウンドの状態や、風の影響を受けやすいのはもちろんですが、打球の強弱や、距離感、前後左右に加えて斜めの動きがあるなど、ショートは動きの選択肢が多いことが特徴です。

さらに配球、サイン、ピッチャーの調子、バッターの状態、イニング、ランナーの状況など、あらゆる可能性を考えて守っています。打球が飛んできたから、ただ捕ってアウトにするだけではなく、捕る時にはグラウンド全体が見えるような視野で捕るということも、長くプレーするための秘訣になってきます。

日本のプロ野球史上、2000試合出場している選手がいないポジションがショートだけだということからも、その大変さがわかってもらえるかもしれません。

読売ジャイアンツの坂本勇人選手が、このままいけば史上初のショートで2000試合出場を達成する可能性がありますが、他の選手にもできるだけ長くショートを守ってほしいという思いがあります。

例えば、福岡ソフトバンクホークスの今宮健太選手。彼の身体能力はすばらしいものがあり、僕も明らかなヒット性の打球を何度もアウトにされました。ただ、身体能力が高すぎるあまり、その動きがケガにつながってしまう可能性が高いというリスクを背負っています。