「筋疲労は乳酸が原因」は誤解だった!
とはいえ、マイオカインの人体への応用はまだまだ先の話。今、僕たちにできることは、運動をして筋肉を維持・増強することに他ならない。そこで、日頃気になっていた疑問を藤井教授に投げかけてみた。
代表的な筋肉増強法はウエイトトレーニングだが、「筋肉はダメージを受けることで大きく・強くなる」と言われている理由を尋ねたところ、藤井教授が興味深いアドバイスをくれた。
「実は、ウエイトトレーニングである程度の負荷をかけた状態の筋肉を電子顕微鏡で見ると、筋肉の構造が少し壊れた場所がいくつか見つかるくらいのダメージだとわかります。筋肉の主成分であるタンパク質は、アミノ酸が50個以上結合したもの。
壊れてバラバラになったタンパク質はアミノ酸なので、すぐに再生の材料として使われて回復するでしょう。ですから、運動で筋肉に負荷を与えてより大きくするなら、筋肉のタンパク質合成を高めるアミノ酸を同時に摂ると効率がいいと思います」(藤井教授)
その類の製品の効果には疑問を持っていたが、今後、運動する時には絶対に摂ろうと思う。さらに藤井教授が面白いことを教えてくれた。昔から、運動した際に筋肉内に出る乳酸は〝疲労物質〟だと言われていたが、これは誤解であるという話。
「乳酸もマイオカインの一種じゃないか?という研究が、最近いくつか出てきています。乳酸は体内の水分でイオン化すると、水素とラクテートになります。水素イオンは㏗バランスを酸性に傾けるので細胞にとっては良くないかもしれませんが、ラクテートは骨格筋がエネルギー源として利用できるのでメリットの方が大きい。むしろ良いものではないかと言われているのです」(藤井教授)