特殊で困難に満ちた刑務官の世界

――刑務官目線の作品が少ない理由の一つに、仕事の内容を話したがる、話せる刑務官が限られているということもありそうですが。

そうですね。協力的な方に出会えた私は運がよかったと思います。正直、そんなに話して「大丈夫なの?」と思うこともあるくらいです。もちろん、受刑者の個人情報に関わるような話はないですが。あくまで聞いているのは刑務官の仕事内容についてです。

――作品内では、刑務官の大変な仕事内容が多数紹介されており、正直なところかなり驚いたというか、私には絶対に務まらないなと思わされました。刑務官の方々は、どんな志で職務にあたっているのでしょうか。

どの現場を切り取っても、かなりハードですからね。とはいえ、若手のころは「絶対に更生させてやる!」と燃えている人が多いみたいです。でも、あまりにも再犯率が高く、すぐに戻ってきてしまう受刑者が多いので、数十年も働いていると諦め半分で受刑者と接する刑務官も中にはいるようです。おっしゃるように、肉体的にも精神的にも、やりがいを持って働き続けるのが大変な職業だなとは思います。

――今後、同シリーズで先生がやりたいことはありますか?

実現性が高いところだと、少年刑務所や少年院、未成年の更生関係ですね。それから、死刑についてはまだまだ掘りきれていないので、今後も描いていくと思います。

――最後に読者やこれをきっかけに読もうと思っている方にメッセージをお願いします。

はい。この漫画をすでに読んでくださった方ならわかるかと思いますが、刑務官の人も普通の人間です。皆さんも、会社で働いて、悩んで、辞めてぇなあと思ったことが少なからずあると思います。ただ塀の中と外、というだけで、刑務官も同じように苦悩しながら働いています。それだけでもぜひ知っておいてほしいですね。

また、彼らは受刑者たちを更生させるのが仕事なので、いわば大人を相手にした学校の先生という側面もあります。それってすごく難しくて大変なことです。そんな特殊で困難に満ちた仕事の世界を、ぜひ私の漫画を通してのぞいていただけたらと思います。